とわだを読む 日々の語LOG

TOWADA HIBI COLLECTION WEB MAGAZINE

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負けても失敗してもOK!
“遊び”で子育てをもっと楽しく ―後編―

親子でボードゲームを楽しむ『親子でゲーム会』などの活動を通して、
十和田市内外のさまざまな人とつながってきた竹ケ原さん。
後半では、地域コミュニティやPTAの活動を通して感じた
地域の魅力や、「こうなればいいな」をお話していただきました。
移住者も地元民も、地域で子育てを楽しむ極意は「考えるな、失敗しろ」⁉

  • たけがはら かおり
    竹ケ原 香織

    北海道小樽市生まれ。酪農学園大学農学部食品科学科(現:食と健康学類)卒業。2010年、結婚を機に十和田市に移住。2020年に結婚前から勤めていたアパレル会社を退職し、2022年「親子でゲーム会」を始動。2023年には十和田市と共催で子ども服のおさがり交換会「どうぞの服」もスタート。NPO法人芸術と遊び創造協会認定おもちゃコンサルタント、同法人認定アクティビティーインストラクター。

    ●親子でゲーム会in十和田
    https://www.instagram.com/oyakodegamekai/

子どもには前向きなメッセージを伝えて、戻ってきたくなる場所に

地域の方とのつながりはどうでしょうか?

私が住んでいる地域は古くからの学区でもあることから、小学校や子ども会、町内会っていうのも割と盛んです。9月にお祭りがあるんですが、十和田市の秋まつりよりも前にその地元の大池神社のお祭りがあって、山車の運行やお囃子もやるんです。子どもは太鼓をたたいて、私は20代のお姉さんに笛を教えてもらうこともありました。運行が終わったら町内会主催で町内の誰でも参加できる焼肉会もやっています。小学校の学習発表会も、コロナ禍前まではその神社でやっていました。

私がやっている遊び場を地域でやって、地域のおじいちゃん、おばあちゃんと子どもたちが一緒に遊べるようにできたらいいなっていうのは、今はまだぼんやりしてますけど目標の1つですね。

地域コミュニティの希薄化が問題になっている地域もある中で、コミュニティがとても元気ですね。

たぶん地域の人はあまり意識してないと思うんですけど。私からしてみると、せっかくそういういい文化があるから、子どもたちがまたここで子育てしたいなって思ってくれるような基盤ができればと思います。子どもたちが都会に行って…行ってもいいんだけど、帰ってきてここで子育てをするような流れにできればなと思います。今は大人たちが「こんな所じゃ稼ぎにならないよ」みたいな感じで、若い人を自ら外に出していく方向になっている気がして…。もう農家辞めるってお家も出てきたり、空き家も増えてきたりしていますよね。「ここにいてもどうしようもない」という話も聞きますが、それは子どもを育てながら刷り込んでいる面もある気がします。でも、地域をなんとかしようっていう前向きな人もいますよ、もちろん。うちの夫の場合は長男で、十和田市から一度も出たことがない人ですけど。

そうなんですか?なんとなく北海道で知り合われたのかと思っていました。

私の大学時代の友人に十和田出身の子がいて、その友人がUターンしてから十和田市現代美術館ができたって記事を読んで「あの大きいおばあちゃんに会いたい!行きたいから泊めて」ってお願いしたんです。

十和田市現代美術館の「スタンディング・ウーマン」という作品ですね。

友人に迎えに来てもらって、色々連れていってもらったんですけど。私、そもそも、中学校の修学旅行で十和田に来ているんです。奥入瀬渓流や、十和田湖周辺の木がトンネルみたいになっているところを見て、私の中ではもうインパクト大でした。中学生ながら感動したんですね。「わー!」って。それで、大人になってからまた来てみて、それからときどき遊びに来るようになったんです。で、たまたま来た時に“はしご酒”のイベントがあって、今の夫と友人が飲み友だちだったので、一緒に飲むことになって…。だから夫とは十和田で知り合いました。

  • 十和田市現代美術館

  • 十和田湖

中学生で初めて来てから、実は十和田に嫁ぐ運命が決まっていた!みたいな。ご縁があったんですね。

まさか修学旅行で行ったところに車で行けるようになるとは思ってもいなかったんですけど(笑)。

ということは、奥入瀬渓流や十和田湖はお気に入りの場所ですか?

そうですね。あとは市民交流プラザ「トワ―レ」のプレイルーム。子どもたちが小さい頃からお世話になっていました。でも小学生になるとだんだん、行っても時間を持て余すような感じになってきて、この空間がもったいないなってずっと思っていたから、ゲームの会をあそこでやろうと思ったのもあります。あとは、市民図書館もお気に入りですね。

市民図書館はお子さんと行かれるんですか?

1人で集中したい時に行ったりもします。私、小学校で読み聞かせボランティアもしていて、絵本コーナーを1時間ぐらい物色しながら何がいいかなって考えたりしています。

なるほど。お話を聞いていると、親子でゲーム会・おさがり交換会の他にも農業、事務のお仕事、読み聞かせと色々なことをしていますね。

そうですね。小学校ではPTAで広報誌作りもやっています。広報委員になったことで小学校に行く頻度が増えて、先輩のお母さんたちから色々小学校の情報を聞くことができて楽しいですよ。学校の中のことを知ることができるし、先生との繋がりができるから喋りやすくもなるし。「レシピ」のゲームを制作する時も、最初に教頭先生と校長先生にお話しして実現できましたし。十和田市の社会教育委員というのも始めて、教育に興味が出てきました。地域が一緒に子育てをしていかないと学校も変わらないなっていう思いもあります。

地域が「もっとこうなればいいな」みたいな希望はありますか?

すごく思うのが、人見知りの人が多い。薄いけど硬い壁みたいなものがあって、それを開いてしまえばすごくオープンになるっていうのもあるんだけど、最初のその壁をもうちょっと破ってもいいんじゃない?って思います。それと「これがあればいいのに」「こうなればいいのに」って思ってることって、きっとみんないっぱいあると思うんです。思っていることがあったら、ちょっとでいいからやってみてほしい。そしたら、ここで生活することがもっと楽しくなりますよね。

移住者の方はみんなけっこう言われてると思うんですけど、地元の方が「こんな田舎によく来たね」とか「こんなところ何もない」とか。でも本当は、いいところがすごくいっぱいある。だから、好きなことやいいところを、もっと地元の人が発信してくれたらいいなって思います。移住者には分からないことを知ることができるし、これから移住を考えている人が「この街楽しそう」って引っ越してきてくれたりとか、転勤してきた人が「ここに長くいたい」って思ってくれたらいいじゃないですか。

みんな移住者に対しても優しいし、助けてくれる。ただちょっとシャイなのかなぁ。ずっと暮らしていると地元の良いところって見えにくくなる部分もあるのかもしれないですね。私が移住者の人と関わることが多いからかもしれないですけど、地域のいいところを発信したり、伝えられる人が増えたらいいなって思っています。

  • 十和田市民図書館

  • トワーレ(プレイルーム)

あえて“動いてから考える”。失敗も悩む姿も見せながら子育て

『子育てをもっと楽しく』をテーマにしているとおっしゃっていたのですが、ご自身が子育てを楽しまれているんですね。子育て生活は慌ただしくなりがちで、「楽しむ」ってシンプルながら忘れがちなことでもあると思います。大人が地域の中で楽しくいられるには、どうしたらいいのでしょうか?

まず「どうしたらいい」ってことを考えないことですかね。

と言いますと?

私もすごく色々考える性格なんですけど、考えると止まっちゃう部分もあるんです。動く時に関しては、あえて考えないで動いてみて、反応を見てから考えるスタンスにしています。親子でゲーム会も、継続が一番の目標ではあるけど「いつやめてもいいよね」みたいな感じでスタートして、反応が悪かったら、やり方を変えてもいい。十和田市と子ども服のおさがり交換会を始めたのもそうですけど、「こうあるべき」みたいなことを考えないようにしています。

なるほど。

最初は「親だからこうでなきゃいけない」とか「ちゃんとした子育てを」とか考えてたんですよ。だから、ちゃんと育てよう!と習い事に通わせたけど、当の子どもは拒否しまくり。でも、それへ連れていくのに必死になっている自分に気づいたときに、「何してるんだろう、自分」って(苦笑)。むしろ自分が楽しいこと、やりたいことにちょっとずつチャレンジしていけば、子どもも自然と、「別に失敗してもいいんだな」って思ってくれるかなって考えが変わりました。

失敗してもいい!って思うと気が楽になりますね。

親子でゲーム会も、始めたはいいけど全然誰も来ない、みたいな時もあって、子どもが「お母さん これ大丈夫なの?」って心配しても、「いいよいいよ」って言っていました。「場所借りちゃってるから家族だけで遊ぼう」みたいな時間もあったり、子どもからしたら「この人やばいな」と思ってるのかな(笑)。でも、それぐらいでいい。「お母さんだってあの時あんなだったから、自分も大丈夫」って思ってくれればいいかなって思っています。

「親の背中を見せる」と言ったときに「かっこいい姿を見せる」と考えがちですけど、逆なんですね。

失敗も悩んでるところも見てもらって、そこをどうやって乗り越えるのか。行動するのもそんなに難しくないんだよっていうのをわかってくれればいいかな。何か頼んで断られたとして、それはそれでいいじゃないですか。活動を始めて、動き出してからの方が大変なことはいっぱいあるけど、最初の1歩はちっちゃく踏み出してみて、だんだんステップを踏んでいけば大丈夫だなって思っています。基本的に楽しいことしかやってない、興味があることしかやってないし。事務の仕事が楽しいかと言えばそうでもないんですけど(笑)、それも自分のため、今後のためになることだから勉強と思っています。失敗も勉強だし、やりたいことを楽しくやってみて、その先を考えればいいかな。

前編はこちらのリンクから
https://towada-iju.com/collection/webmagazine/043

今回の取材場所

Book&Space 旅空間

〒034-0033 青森県十和田市東五番町1-10
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