おいらせ町を拠点に、子育てサポート事業を展開する『合同会社HLCおいらせ』。代表の長沖みのりさんは、看護師・ヨガインストラクター・整理収納アドバイザーなどの資格を生かし、親子ヨガ教室やママの起業支援、思春期特有の悩みに寄り添うカウンセリングに整理収納レッスンと、多岐にわたる活動を行っています。

2012年に個人事業主として起業し、5年間でレッスン参加者中心のLINEグループが200名を超えるまでに。18年には合同会社化しました。

「本来インドア派で、１日中ベッドで漫画を読んでいたいタイプ」と笑う長沖さん。自己分析とは裏腹に精力的な活動を続けるのは、「孤独の中で子育てするママを１人でも減らしたい」という思いからです。

「自分で選んだことですよ、結婚も子育ても。分かっていてもやっぱり、見知らぬ土地で慣れない子育てをするのは恐ろしく孤独でした。だから私がしているサポートは、あの時の私がしてほしかったこと。〝脱・孤独な子育て〟が、すべての活動に共通するテーマです」

そう言って柔和な笑顔から一転、表情を引き締めました。

自衛隊駐屯地がある八戸市と米軍基地の街・三沢市に隣接するおいらせ町は、転勤族ファミリーが多い土地柄。長沖さん自身も転勤族の夫を持ち、結婚後８年間は専業主婦として家事と子育てに専念。その間に宮城県、アメリカ南部テキサス州、沖縄県と、国内外を転々としました。レッスン・セミナー参加者の実に半数が転勤族なのは、暖かい共感がそこにあるからでしょう。

　青森に来たきっかけは、夫の赴任地が三沢市だったこと。長男が小学2年に進級するタイミングでした。

　「それまでは『次どこに行くの？』とワクワクしながらついてきた長男が、『もう動きたくない』と言い出して。ついに来たなと思いました」

　父親も転勤族だった長沖さんは、転勤のたびに友人と離れなくてはならない子どもの辛さがよく分かっていました。引っ越し後、青森県南の環境を体感するにつれ魅力を感じ、「子どもが（転勤を）嫌がったら無理強いしない」と夫と約束していたこともあって、自宅を新築することにしました。

　おいらせ町に決めた理由は、「一番はアクセスの良さ。私の実家がある鹿児島にも夫の出身地の大阪にも、飛行機ですぐ行けるのがありがたかった」

　次に「食の自然の豊かさも大好き。日常で口にするものすべてが、いちいちおいしいんです。青森はりんごやお米がおいしいことは知られているかもしれないけど、水、米、魚、肉、野菜、果物…。全部おいしいっていうのは、住んでみないと分からないと思います。特に水がすごくおいしくて、どこに行くにも着けていた浄水器を外せたんですよ」

　そして「フレンドリーな人柄も良かったですね。地域によっては〝よそ者〟への風当たりが強いところもあるんですけど、ここは全然。三沢基地が近いこともあるのか、職業も人種も関係ない感じです」

　1998年に移住。子育てをしながら三沢市で妊産婦新生児訪問指導員（現・こんにちは赤ちゃん訪問事業）として従事し、16年間で約4,000組の親子とふれあった経験が、その後の起業につながりました。

移住して20年。以前は衣食住すべての家事を妻の長沖さんがしていましたが、息子二人が巣立ち、長沖さんが仕事に奮闘するようになると、夫が朝食や弁当作りなどを担当するようになりました。まだまだ気力・体力があり、夫婦が支え合いながらそれぞれの道を邁進する現在の生活を〝プチ老後〟と名づけ、満喫しています。

2019年、放送大学卒業と同時に同大認定心理士資格を、また企業内整理収納マネージャー（特定非営利活動法人 ／一般社団法人ハウスキーピング協会認定）も取得した長沖さん。これからの目標は？

　「今までは直接ママたちを支援してきたんですけども、これからは間接的にも支えていきたいです。保育園や児童施設の整理収納をお手伝いするようになって気づいたのが、子どもが１日の大半を過ごす場所の環境をよくして、スタッフさんが気持ちよく働ければ、それは間接的にママたちの支援になるんじゃないのかということ。親子・子育てに関わる場所を整えることをやりたいって、私自身だんだん見えてきたところです」

　ママから子どもへ、家族へ、そして地域へ。笑顔の輪を広げるべく、長沖さんはこれからも走り続けます。