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013 移住フォーラム第2弾 移住女子会 Part③完結

  • ウェブメディア『灯台もと暮らし』 編集長
    伊佐知美

    1986年、新潟県生まれ。横浜市立大学国際総合科学部卒業後、大手信販会社、出版社勤務を経て独立。これからの暮らしを考えるウェブメディア『灯台もと暮らし』(もとくら)編集長・ライター・フォトグラファーとして日本全国・世界中を旅しながら活動中。オンラインサロン『伊佐知美の #旅と写真と文章と Slackコミュニティ』主宰、著書に『移住女子』。

    灯台もと暮らし http://motokurashi.com/

  • TURNS編集部 企画・地域コーディネーター
    須井直子

    1988年、横浜生まれ。大学卒業後、広告代理店・不動産業を経て、2015年より株式会社第一プログレスにて「TURNS」の企画・運営に携わる。郊外育ちで、田舎暮らしはもちろん一軒家で暮らしたこともないが、この夏に5歳の息子と1週間のお試し青森移住を体験し、すっかり青森暮らしに魅了された。

    TURNS
    https://www.turns.jp

  • 渡部環境設計事務所
    横濵久美子

    1980年東京都稲城市生まれ、北海道網走市育ち。東京の大学院修了後は個人建築設計事務所に所属し、主に住宅設計を手がける。2011年、個人事務所設立。14年、青森県野辺地町で両親と祖母のために「榑縁(くれえん)の家」を設計。16年1月に移住し、同年3月、長男を出産。

    渡部環境設計事務所
    http://watabe-aa.com/

  • NPO法人奥入瀬自然観光資源研究会(おいけん)事務局・ガイド
    玉川えみ那

    1985年、十和田市生まれ。大学進学とともに上京し、卒業後は都内の写真関連会社に就職。父親が奥入瀬で事業を興したことをきっかけに故郷への思いを新たにし、2012年にUターン。結婚を機に、2013年に夫も県外から移住。現在、ネイチャーガイドとして日々奥入瀬の自然と向き合い、その魅力を発信している。

    奥入瀬自然観光資源研究会 https://www.oiken.org/

  • 字と図 ライター
    吉田千枝子

    1975年生まれ、十和田市出身。2013年に家族でUターン。グラフィックデザイナーの夫・進さんと制作ユニット「字と図」を結成し、イベントプロデュースなど活動の幅を広げる。現在の家族は千枝子さんの祖母、両親、小学2年生の長女と2歳の次男。

    字と図
    http://jitozu.com

  • 司会
    柳澤ふじこ

    1978年、青森県中泊町生まれ。フリーアナウンサー・産業カウンセラー。ラジオパーソナリティとしてはFM青森「ヒルモット」などに出演中。県内を中心にテレビ出演、イベントMCも数多く務める。NPO法人プラットフォームあおもりサポーター。

自分の常識は誰かの非常識。「好き」でつながる仲間を探せ!

ありがとうございます。では次に吉田さんの移住のきっかけを。

私は第2子を出産するときに早期胎盤剥離になって、子どもが脳性麻痺になったんですね。その介護がしたいなと思った時に、東京だと厳しいなと。親や周囲のサポートも必要だと思ったので、地元に移住しました。半年ぐらいでその子は亡くなってしまったんですが、その時も、山を見るだけで癒されたっていうか。毎日見ているはずなんですけど、「ああ、八甲田山だな」って思うだけで少し救われて、自然の力を感じました。子どもが亡くなって、当初の移住の意味はなくなったんですけど、でもその時に、東京に帰りたいのかって考えると、「無理だな」と思って。東京にいる時、私、代々木公園が大好きだったんですよ。行くと緑に囲まれて安心するというか。だから代々木公園に住めたら良かったんですけど…。

それは、なかなかね(笑)。

家賃も高いし、無理でした(笑)。こっちに戻って、たまたま「和酒女子」という企画を十和田市の観光協会の方が考えていて、そのパンフレットの制作をやってくれないかという話があって。正直、ショックが大きくてそれどころじゃなかったんですけど、逆にやってみたら楽しくなるかなと、無理やり自分を奮い立たせて、地元のことを取材していくうちに、今まで知らなかった十和田の魅力をいっぱい知ることができたんですね。刺し子だったり、裂織だったり、奥入瀬も行って、「なんだ、いい街じゃん」って。その時の自分の気持ちも乗っけて作れたという意味で、すごく思い出深いガイド紙です。

もともと十和田市のご出身で、何かあった時には自然が癒してくれるっていうのが身についていたんですね。戻って、物質的には何があるというわけではなくても。

そうなんです。あんなに憧れて東京行ったのに、癒されなかったというか…。年代によって状況によって、必要なものは違うと思うので、一概に「良い」とか「良くない」って話ではないですが。東京大好きですし、遊びに行きたいと思いますし。でも子育てをしていると、十和田、いい街だなってすごく思いますね。

聞いていて嬉しくなりますね。十和田の良さを実感して、その気持ちをお仕事で還元している。

していけたらいいなって思いますね。

「和酒女子」についても聞きたいですね。

十和田市に1軒だけの酒蔵「鳩正宗」は、美味しいお酒を造っているんですけど、地元以外ではあまり知られていなくて。観光協会で地域を盛り上げる方法として、「十和田の和酒女子」っていう名前を付けて、お酒好きの女子が集まって飲み会とかやっていたんです。そのうちに飲み会だけじゃなく、ガイド本を作ってしまおう、みたいな流れでした。最初はただ酒好き女子が集まってるだけだった(笑)のが、ガイド本を作り、杜氏さんのご協力のもと仕込みのお手伝いをさせていただいて、「好きになっちゃった」っていうお酒も造ったんです。去年第一弾で、今年、第二弾。飲みやすいお酒で、すごく美味しいです。お酒の名前を和酒女子で考えたり、ラベルデザインを主人がやって、ありがたいことに売り切れになるほどで。今年、そのラベルがドイツのデザイン賞を受賞しまして。それも、地元への恩返しの一つになったかなと私としては思っています。デザインしたのは主人なんですけど(笑)。

お話を聞いていると、好きなことを「好き」っていう気持ちをどんどん重ねてお仕事をされていますよね。さて、最初の編集女子のお話では、”人”が魅力だということも出ました。ゲストの方々も、人に関するエピソードってありますでしょうか?

そうですね。十和田は大小さまざまなイベントが多くて、そういう場に皆さん集まっていますね。仕事にもそこでつながったり、優しい、協力的な人が多いと思います。子どもを連れて行ったりもしますし。交流の場がすごくあるなって。

聞いてもいいですか? 逆にここダメだなとか、やりづらいって思うことはありますか?

最初に来た時、シャッター街がすごく目立っていて、残念だなと思いました。少し、閉ざしている部分もあるのかなと。もう少し色んな人に貸し出したりとかして活気が出たら、元から住んでいる方も移住者も楽しくなるんじゃないかな。

商店街も湖畔の観光地も、今いる人だけで新しい発想を生み出すのは難しいと常々思っていて。新しい方向を示す人とか発想を拒絶するっていうのは、田舎にはありがちだと思うんですけど、そういう中で、移住者は今までのしがらみを断ち切ってくれる存在ですよね。イベントといえば、アレックスとマイケルの14-54企画のイベントがすごく多くて、そこでつながりも生まれています。14-54(※②)ができた時、希望の光が差し込んだって感じたんですよね。昔からの十和田を知っている人と、新しく来た人が上手に絡めるいい場所ができたなって。

人口減少でにぎわいがなくなっていくっていうのは大きな問題ですが、移住者の方の”外から見た”アイデアが、もしかしたら問題を打破するきっかけになるかもしれませんね。吉田さんはいかがでしょうか? “人”に関して思うこと。

私は本当に人に助けられて立ち直ったと思います。みんなさりげなく助けてくれたのがありがたかった。お世話になった人の中には転勤族の方もいて、移住者は私たちだけじゃなく、実はいっぱいいるんですよね。あとさっきの横濵さんのお話について言うと、私もUターンしてきて、商店街がもっと楽しくなったらいいのにな…と思うことはあるんですが、傍観者視点になっているんですよね。誰か何かしてくれたらいいな、みたいな。アレックスとかマイケルは、思ったら即行動っていうのがいいところ。私も失敗してもいいからやってみないとなって、話していて思いました。自分が自分の住む街楽しくしないと。…ってなんか、いいこと言っちゃいました(笑)。

(笑)。今のお話は、編集者目線でも頷けます。雑誌「ソトコト」の指出編集長が使う言葉で「地域には関わりしろがあるよね」っていうのがあるんです。「のりしろ」と一緒で「関わりしろ」。ないなら作ろう、とか、やってみたいと思ったらすぐやれる、それが地域のいいところだなと思っていて。移住される方を取材していて、何かやりたいことがあって、それを実現する場所として都会ではない場所を選んだんだなって感じることが多くて。私が一番素敵だなと思うのが、個人が何かやりたいと思った時に、それが地域の夢と重なっていくこと。自分一人のための発信だったはずなのに、それがいつの間にかみんなのためにもなっている。可能性が多分にあるのが地域のいいところで、十和田もそうなんだろうなって。

色んな方とお会いする中で最近思うのが、「街のために」とかって考え始めると、だんだん自分事じゃなくなってきちゃうし、誰のためか分からなくなっちゃう。だから、とりあえず、自分の好きなことを考えてみるっていうのが一歩目なんじゃないかな。で、何かしたいと思ったら、隣の人に声をかけるだけで、実現する可能性が上がるじゃないですか。都会よりも田舎の方が、一人一人の存在感の比率が高い気がします。都会は色んなシステムが出来上がってるし、土地もないし、物件もないし。余白がない。田舎だと逆に出来上がってなさ過ぎて大変なこともあるかもしれないけど、人と人との関係性の中で色んなことを変えていけるし、それが地方のいいところなんじゃないかって、いつも思います。怖いかもしれないけど、やっちゃえばだんだん平気になるんじゃないかな。

計画練ってるよりも、動いた方が早いぞ!と。では今日のまとめに入りたいと思います。今日を振り返ってみて、感じたこと、やっていきたいことなどあればお願いします。

そうですね。本業の建築の認知度もまだまだ足りないし、新築の建物もまだ手掛けられていないので、そういう依頼がくるように、十和田市にこういう設計事務所があるよ、と認めていただけるようになりたいです。それと、先ほどもお話しした空き家をどうするかということについて、実は字と図さんと一緒に考えています。十和田に移住して来た方が、空き家を利用して事業をしやすいような支援ができればと思っています。(※③)

今日、面白いなと思ったのが、普段の自分とは全然接点がない分野のお話が聞けたことですね。私は自然だったけど、建築という角度で見てる人もいる。例えばアレックスの14-54は渡部さんご夫婦の設計で、そこに吉田さんご夫婦も企画とかに関わっているとか、新しく移住された方ともともと住んでいた方々が、この十和田で交じり合っているのが面白い。あとは移住ってやっぱり仕事がネックだと思うので…。私はNPOでガイド業をしていますが、それだけでは成り立たなくて、県の委託事業なんかを受けてなんとかやっていけている状況なので、ガイドを職業として成り立つような仕組みを作るのが目標です。

私はライターや編集の仕事がここでできるなんて、全く思っていなかった。でもよくよく聞いたら、そういう仕事をする人が全然いないと。だから、これは余白につながる話だと思うんですけど、「仕事、意外と作れるぞ」と言いたいです。仕事にしちゃえば何とか食べていけるっていう部分があると思うので、せっかく移住を検討している人がいたら、「仕事ないしな」じゃなくて「作ろうよ」って言いたい。例えば「十和田のタウン誌作ろうよ」とか、一人じゃ難しいことも、つながればできる。興味がある人は、どんどん声をかけてくれればと思います。

ありがとうございます。最後に編集女子のお二人から何かあれば。

職業がかぶらないから多様性が生まれるんじゃないかな。人が多ければ、似ている人で集まるじゃないですか。でも十和田はそうじゃなくて。「ちょうどいい」っていうのは、色んな人がいられる環境がちょうど整っているんじゃないかなって気がします。すごくうらやましいことだし、手に入れようとして入るものじゃない。外の人ともちょうどよく関わって、この街がどう変わるか、この先楽しみですね。

第一弾でも申し上げたと思うんですが、ここに登壇している人って、特殊能力持ちに見えると思うんですね。でもそうじゃない。私の場合は営業職をやって、「やっぱり書くことで生きていきたい」と思って、1本500円から始めてみたんですね。で、書き物をする上で大事にしているのが、「自分の常識は誰かの非常識」ってことなんです。自分は普通にやっているけど、他の人にはできないこともあるし、その逆もある。私はちゃんと1カ所に住んでいないので、定住できるって、もはや能力なんですよ。ゲストハウスとかやる時に、常駐できる、ここに住んでいるって、私にとっては「マジですか⁉」なわけで。自分の常識は誰かの非常識かもしれないから、「私まだ何者でもないです」じゃなくて、まず言ってみるのがいいんじゃないかな。

今日はなかなかディープな話ができたんじゃないでしょうか。会場の皆さんもきっと、心を動かされた部分があるのではと思います。まず、知ることから。「好き」を共有できる仲間を作ることから。「出会いは一瞬、出会えば一生」とも言います。出会いを大切にして下さればと思います。ありがとうございました!

移住フォーラム第二弾完結。

※② 参加型オープンスペース14-54 https://www.14-54.com/
※③ 青森県十和田市の空き家と空き店舗をデザインで解決する移住コミュニティ zig+zag http://zig10zag.com/category/zigzag%E6%97%A5%E8%AA%8C/

今回の取材場所

市民交流プラザ トワーレ

 隈研吾氏設計の市民交流プラザ「トワーレ」は、「みちと広場を融合させたにぎわいの広場」をコンセプトに平成26年10月14日にオープンいたしました。
 イベントの他、市民活動支援ゾーン、たまり場ゾーン、子育て支援ゾーンなど多数の用途で市民から利用されています。
 気軽に立ち寄れる場所となっていますので是非ご利用下さい。
住所:〒034-0011 青森県十和田市 稲生町18-33
TEL:0176-58-5670
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