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014 「移住者さんと語ろう」 in十和田第一中学校 後編

十和田第一中学校の「ふるさと学習」って? 先生に聞きました。

マイケルさんの授業を終えて教室を後にする生徒たちの表情は、始まる前よりも少しだけ大人びて見えました。ほぼ2時間ネイティブの話を聴き続け、きっと英語に対する意識も変わったはず。

今回の取材では、国語・数学など従来の教科の枠にとらわれず、子どもたちに未来を生きる力を付けてもらおうと奮闘する先生たちと、その思いを受け止めて成長していく子どもたちの姿を見ることができました。

十和田市では「日本一を目指した特色ある教育活動推進事業」として、市内の小・中学校がテーマを掲げ、独自のカリキュラムに取り組んでいます。ここ十和田第一中学校のテーマは「奉仕の心(志)日本一を目指して ~ふるさとのために 誰かのために 考え、行動できる人に!~」だそう。

2学年主任・工藤信子先生と、同じく担任の村口明子先生に、十和田第一中学校の取り組みについて詳しくお話をうかがいました。

まずは授業を終えて、先生方はどんな感想をお持ちでしょうか?

ホワイトボードにマイケルが書いていた「Who am I ?」から「What can I do ?」というその発想の転換が、子どもたちが将来を考えるヒントになっていったらいいなと思います。2月に「立志式」というものを毎年、行っているんですが、そこでは2年生の生徒が1人1人、自分の10年後の未来予想図を発表します。この立志式に向けていいキーワードをいただきましたね。

コミュニケーションって言葉だけじゃないなって感じました。マイケルさんは身振り手振りを使ったり、ゆっくり話したり、何度も繰り返して話したり。中学生に通じるように簡単な言葉を選ぼうと、きっと一生懸命考えてくださったんですよね。英語が完全に分からなくても、その誠実さ、一生懸命さは子どもたちに伝わっていると思います。

今日の授業「移住者さんと語ろう」は「ふるさと学習」の一環ということでしたが、そもそも「ふるさと学習」はどういったものなんでしょう?

文部科学省の学習指導要領にある「総合的な学習の時間」を使ってやっていて、今年で3年目になります。3年間通して地域資源や人材とふれあい、地域の魅力を学ぶとともに子どもたちの将来設計につなげていきます。1年生の段階ではまず、地域を”知る”ことから。1年生の11月には十和田市観光推進課の方に来ていただいて、市の観光の実態についてお話ししていただきました。

子どもたちは長いも、にんにくが名物ということは知っていても、通学路ににんにく畑があることは意外と知らない。1年生のときの7月には” 野菜ソムリエさんに学ぶ十和田野菜の魅力”ということで、親子でクッキングを実施しました。

すぐ近くにある道の駅「奥入瀬ろまんパーク」を自分たちで見て、調べるという活動もしています。他の有名観光地の道の駅と、自分たちの地元の道の駅を比較する学習です。外に出るばかりじゃなく、常に自分たちの足元も見る、というのを意識させています。十和田、青森の商品がどのように売られているのかを、青森市のA-Factoryなどで取材し、最後は十和田の魅力をさらに広めるアイディアを生徒たちで考えてプレゼン。それが1年生の12月ですね。

座学だけではなく、実際に冬の奥入瀬・十和田湖に出かけてネイチャーガイドさんに案内してもらいながら氷柱を見たり、「十和田湖冬物語」の雪像やかまくらバーを日中に見学しました。

実際に体験する、肌で感じることは外せないと思っています。冬の十和田湖を知らない生徒もいるので、まずは見てほしいし、実際に見ることで気づくことがたくさんあるはず。

2年生になってからは?

2年生の11月に東京に修学旅行に行き、そこで十和田をPRするのが1つの” 本番”というか、発表の場になります。そこに向けた準備活動ですね。7月に十和田市役所の政策財政課の方から「ふるさと納税」のお話を聞いて、とわだ産品販売戦略課さんから十和田の産品のお話を聞いて、上北農産加工さんにおじゃまして「源たれ」の魅力を取材。十和田湖では、観光施設が軒並み閉店している実態を目の当たりにしました。遊覧船に乗って、観光客に「ふるさと納税の返礼品として欲しい産品はどれですか?」とインタビューしました。十和田のことをよく知らないと自信を持ってPRできないということで、ガイドの方と奥入瀬渓流のコケを観察したり、十和田市現代美術館の学芸員さんと街歩きをしたりもしました。

2016年、2017年の東京でのPR活動は十和田の産品と観光地の景観がメインだったんですけど、今年はさらにアートも入れて、PRしたいものを広く探っていこうと。

今回はまず、「子どもたちに”アートのあるまち十和田”を伝えたいんですが、何かできないでしょうか?」と、十和田市現代美術館さんにお話を持っていったんですよ。そうしたら、できたばかりの14-54(イチヨンゴーヨン)を紹介してくださった。アーティストさんが色々いらっしゃる中でも、限られた時間の中でできて、インパクトのあるものをとなった時、イラストレータである安斉将さんが作成した「ウマジン」が出てきました。だから同じ7月に、ウマジンを作って街に飛び出して、商店街の方々とコミュニケーションを取る練習もできました。こちらの思いと、十和田市現代美術館さんが持っているアイデアとかネットワーク、場所のマッチングができたんですよね。こちらが思いを投げたら、受け止めて投げ返してくれる人がいる。十和田のいいところだと思います。

修学旅行ではアンテナショップに関するアンケートも実施したんですよね。アンケート結果をもとに、十和田独自のアンテナショップの企画案を授業でプレゼンしたそうで。実践的ですね。

キーワードは「つなげる」と「自分事にする」。今回は青森県と、北海道・北東北のアンテナショップでPRをさせてもらったんですけど、「もし十和田だったら?」と自分事にするのは、今年初めてやってみました。

手応えはいかがでしたか?

プレゼンでは、思った以上に多岐にわたるアイデアが出ました。何より嬉しかったのは、これまで色々な経験をしたことが子どもたちの中に種のように残っていて、少しずつ芽吹いてきたと感じられたこと。

「そういえばあれもあったよね」って、今までの学習を記録したファイルを調べていましたよね。

「あの時こんなことやったじゃない」「そうだった、そうだった!」ってね。学んだことを次のアイデアにつなげることを、子どもたちが自然にやれるようになってきている。

やらされているじゃなくて主体的に取り組んでいるからですよね、それは。能動的な学び、アクティブ・ラーニングという言葉をよく聞きますが、今までの「教える」「教わる」の関係だけではなかなかできなかったところですよね。それがこの「ふるさと学習」ではすんなりとできている、そんな印象です。先ほど授業を終えたマイケルさんに感想をうかがったら、「” 講師と生徒”みたいな関係ってあまり好きではないんだよね。本当はオフィス「14-54(イチヨンゴーヨン)」に来てみんなで何か作りながらコミュニケーションできたらいいな」っておっしゃっていて。そういった双方向の学びの、今は入り口に立っている感じですね。

はい、行政も含めて街の空気が変わって、機が熟してきている気がします。私たちも調べてみて色々なことが分かりました。たとえば修学旅行の時に配るリーフレットやパンフレットも、集めてみたら前よりもステキになっているんですよね。ウェブサイトも洗練されてきているし、知りたい情報がちゃんと入ってアップデートされている。私たちが「ふるさと学習」を考えたのが4年前のことなんですが、ここ数年で本当に変わりましたよね。前はよその情報を使って学習に活かすことも正直あったんですが、今はそんなこともなくなりました。

私は市外の出身で、活動を通して初めて知ることが多い。子どもたちと近い目線なんですよね。こんな身近にこんなすごいものがあるんだ!こういう人たちがいるんだ!と。生徒も言っていましたが、知れば知るほど、街に対して誇りを感じるようになりますよね。

ふるさと学習のねらいはそこにあると。

そうです。自分たちの地元に誇りを持つこと、そして自分に何ができるか考える。10年後、20年後、どこに住んで何をしているか分からないけれど、ふるさと十和田に思いを馳せて生きていってもらいたいですね。

来月(2018年2月)は立志式。毎年やっているんですよね。

はい。村口も少しお話ししましたが、立志式では10年後の自分について発表します。プレゼン資料を提示しながら、1人1人全員が発表するんです。今は新聞記事の中から、子どもたちそれぞれが興味と適性に沿った情報を集めています。テーマはたとえば食、AI、自動車整備…さまざまなジャンルから記事を集めて、自分の興味の情報は集めて、どれをどう使うかは” 自分事”として、自分で選びます。興味と、あとは、「これなら自分らしい生き方ができるかも」というのが基準かな。「自分らしく生きる」もキーワードです。マイケルさんもおっしゃった「Who I am?」 自分を見つめるということですよね。自分を分析する力をつけて、自分に合ったものを選択してほしい。総合学習の究極のねらいは、「よりよく生きる」ということなんです。

「ふるさと学習」は、十和田市全体で行われているのでしょうか?

郷土に誇りをもたせる教育は、青森県としても十和田市としても目標に掲げています。小学校では「自分たちの地域を学ぶ」学習は、どの学校でも行われていると思います。中学校でもある程度は行われていると思いますが、将来の地域を担う子どもたちに身に付けさせたい力を「ふるさと学習」を軸に将来を思い描く学習とつなげて3年間取り組んでいる点では、十和田第一中学校は特色のある教育を行っていると思います。こんな取組が市内や県内でも広まればいいなと思いますね。先ほども言いましたが、思いを伝えたら、つなげて、考えてくださる方がいるのが幸せですし、十和田のよさだと思います。

1年生からずっと大きな目標に向かって取り組み、立志式までつなげている学校はまだ少ないですが、修学旅行で地元をPRする活動は、小・中学校に広まってきていますよ。

今後、考えている取り組みは?

中学3年生は、具体的に学校や学科を選ぶ段階。とはいえ高校がゴールではありません。夢に近づく進路が身近にない、という生徒なら、その先の専門学校や大学も一緒に考えます。立志式で具体的に将来を思い描けば描くほど、具体的に考えられるようになっているはずです。夢について考えるためにコーチングの専門家を招くことも予定しています。世の中がすごいスピードで変化している中で、自信を持つこと、夢を叶えることについてお話ししていただきたいと思っています。一方で、10年後、20年後に、今世の中にある職業があるとは限らないということも生徒たちに話しています。機械がもっと社会に入り込んでいるのが当たり前になり、AIに代わりが務まる仕事はなくなっていくよと。でも今こうして、ふるさと学習の中で「ああでもないこうでもない」とチームで話しあっていること、これは人間にしかできないと思うんです。最新の情報も取り入れながら、今やっているのが人間として大事なことだとは言い続けたいですね。
今はインターネットで世界とつながりますけど、そこで得た情報は不十分だと思っているので、できる限り”本物”に触れてもらうように。あとはモノだけではなくて、必ず”人”との出会い、人の思いを感じることを大事に考えています。これからも本物を見て、聞いて、体験して、肌で感じることを重視していきたいです。

「移住者さんと語ろう」 in十和田第一中学校 完結。

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