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026 農業法人経営者の座談会
テーマは【十和田で農業×起業】~後編~

農林水産省のデータによれば、農業経営体数(個人・法人の合計)が減少する中、企業として農業に携わる「農業法人」は増加。ここ十和田市でも農業で起業する人がいます。今回は、若手農業法人経営者のトークを前後編で。農業って儲かるの?

  • 株式会社グリーンソウル 代表取締役
    米田拓実(まいた たくみ)

    1973年十和田市生まれ。実家は兼業農家。食品メーカーの営業として都内で勤務後、実家の農地を活かし25歳で就農。2012年4月(株)グリーンソウル設立。ながいもを中心に、ごぼう、水稲、大根、にんにくを生産・販売。

  •  十和田アグリ株式会社/有限会社竹ヶ原農産  代表取締役
    竹ヶ原直大(たけがはら なおひろ)

    1979年十和田市生まれ。実家は米農家。大学卒業後、八戸信用金庫(現:青い森信用金庫)入行。2013年8月、退職と同時に十和田アグリ(株)設立。2015年、「あおもりの旨い米グランプリ」まっしぐらの部で生産米がグランプリ受賞。

  • 株式会社岡本 取締役生産部長
    岡本巨樹(おかもと なおき)

    1975年十和田市生まれ。飲食店勤務、約3カ月の海外放浪などを経て父が創業した (株)岡本に入社。リサイクル業などから農業生産法人へと業態を変えた。趣味のスノーボードでは2016年、全日本スキー連盟公認スノーボード指導者資格取得。

人手不足が業界全体の課題。自動化・機械化に期待

日本全体で人口が減っている今、人手不足はどの業界でも言われていること。とはいえ先ほども米田さんからお話があったように、農業は特にやる人がいないと。後継者がいないのは、儲からないから? 大変そうだから?

正直〝3K〟の職場じゃないとは言えないですし、普通の農家であれば、冬しか休みがないこともありえる。青森県内の高校生の約半数が県外に出てしまうので、残ってる若い子がまず少ない。パチンコ屋さんに行くと車いっぱい停まってるんですけどね(笑)。

確かに就職先として考えたら、お給料は気になるところです。忙しい時期とそうでない時期で違うとかだったら嫌かも。

冬のお給料を基本と思ってもらえれば。忙しい時期は残業などで支払額が大きめになりますが、基本給が変わるわけではないので。皆さんのところも同じですよね。

さて、皆さんは人材確保、どうしていますか?

うちは本当に(募集しても)来ないので(笑)。すべてウェルカムってほどではないですけど、来てくれたらだいたいは「やってみたら?」って受け入れます。リサイクル業時代からの社員もいますけど、農業生産法人にしてからだと、機械のオペレーターで9年ぐらい続いている若手がいます。学生の頃からバイトで来ていて、「ふだん親からもらっているお小遣いを自分で稼ごうと思ったらこういう風に働かなくちゃいけないんだよ」って感じで教えていました。

うちはけっこう人を選ぶから(集まらないの)かなぁ。自分のやり方みたいなものを主張しすぎる人は雇えない。「私できます!」っていう人ほどできなかったりする(笑)。だからかえって未経験のほうがいい場合もあるんです。あとは単純作業が多いので、真面目な人じゃないと。

ちょっと分かる(笑)。僕はもともと好き嫌いがハッキリしているので、(採用については)会って話して、感覚です。人として信用できるか。今いる社員も、前職もタイプもバラバラですね。一つ言えるのは、経験より意欲! やる気があれば大丈夫です。

やる気重視! 働いている年代が幅広いので、シニア層の再就職先としてもありですよね、これからの時代。

ドローンもありますし、トラクターにも自動操縦をつけてます。もっと技術が進歩して、現場まで行かなくても遠隔オペレーションで仕事できるようになるところまで行くと、人材面でももっといろんな人が入れるかもしれない。

芽がお金に見える? ライバルは勝手に減る? 10年後、それぞれの目指す姿

十和田市で農業法人をやりたい!という人がいたら…先輩としてアドバイスはありますか?

農地が多い、水が豊富できれい、平坦地が多い。これだけ条件が整っているからこそ、農業が十和田市の基幹産業なんだと思います。まだまだチャンスはある。金融機関で色々な業種を見てきましたけど、農業ほど自然淘汰でライバルが減っていく業種をほかに知りません。ふつうは儲かる産業ができると、ライバルは増える。おそらく国内で農業だけだと思います。その仕事に従事する人がどんどん減っているのは。裏を返せばこれは、やり続けることさえできればライバルが勝手に減って、シェアが取りやすくなる。やり続けられた人にはいい未来が待っているんじゃないかなと期待しています。

人口が減っているとはいえ、食べない人はいないですものね。

というか、人口減少以上に、農業人口の減るペースのほうが早いんじゃないかな。国で試算していない、数字には出てこない部分で。「食べるものが余っている」というのは、今の生産者が同じペースで作り続けることを前提にした話で。米なんか特にそうで、発表されている数字では自給率が低いですよね。今が一番過渡期にある気がしていて、あと10年したら、需要と供給のバランスが変わるはず。作っている人たちはもっといい思いができるかなと思っています。

その頃には国産野菜のアドバンテージがもっと出てくると? 消費者的には国産品が庶民に買えない値段になってしまうのは困るかな…。

40年前の大根の価格と今と、変わらないですよ。結局食べるものなので、相場はそう変わらないと思います。

今後、十和田市で農業法人をするならどうしたらいいかっていうと、会社を立ち上げるのは意外と簡単。考えるべきはリスクです。経費がかかるとか、社保・厚生年金を全員にかけなくてはいけないとか、野菜が高くて儲かるよって部分と、安いときももちろんあるし。今は特に野菜全体の価格が低迷している時期で、今始めるのはちょっと苦しいかもしれない。

でも十和田市はながいも、ごぼう、にんにくと全国的に見てブランドになっている特産品がすでにあるので、これから入る人でもチャンスはあるんじゃないですかね。たとえば黒にんにくをメインにするとか、特産品に絞ってプロフェッショナルになれれば売れる。私は青森県の農業法人協会で役員をしているんですけど、年間100社くらいは海外に進出していると聞きます。農業法人協会は全国組織なので、何十億って稼いでいる全国の農業者と交流する機会も持てる。そういうところに入って交流することも、チャンスを広げるかもしれない。

確かにものすごく天気に左右されるんで、そこがすごくポイントだと思います。何をどう事前に準備しても何もできない。一次産業の難しさですよね。テクノロジーの進化がそのリスクに対応してくれるようになるといいなと思いますが。起業するに当たってもこのリスクは頭に入れておいた方がいいと思います。

私は就農したい人へのアドバイスって要らない気がします。本当にやる気がある人はとっくにやってるでしょ(笑)。

それもそうですね(笑)。では岡本さんが考える農業法人の醍醐味ってなんですか?

毎年ほとんど私が種蒔いているんですよ。その日に蒔く大根の種をギリギリまで迷うから任せられない(笑)。出荷先、天候とか色々考えて。悪く言えば優柔不断。よく言えば、最後まできっちり仕事がしたくて悩むんです。芽が出てくるとホントに嬉しい。芽がお金に見える(笑)。作物の成長と、収穫したときの達成感。それをスタッフと分かち合えるっていうのが、農業の魅力かも。人を雇ったり経費をかけたりリスクも大きいですけど、チャンスがきたとき、活かせたときのリターンが法人の方が大きい。個人だと1日100個しか売れないものが、法人規模でやることによって1,000個、10,000個って売れると大きいですよね。

  • 大豆播種作業

  • ドローンでの防除作業

これからどういうところに力を入れていきたいですか?

うーん…機械的な技術はものすごいスピードで進化してます。でも現場の生産技術はどうかと行ったら意外と進んでない。初めに言ったように「野菜の気持ちになる」「虫の気持ちになる」みたいな、根本的な部分をもっと考えたほうがいいなって思います。機械的な部分以外でのこまやかな知恵というか、ノウハウ、技術。農業機械が出ると私も買ったりはしますけど、経営を安定させるためにしなきゃいけないことって、もっと足元にある気がする。遠くにある機械じゃなくて。

人間の手でできることって、もっと本当はあると思ってるし、そういう〝人間ならではの部分〟の価値が、この先はもっと上がっていくんじゃないかな。

たとえば、人それぞれ欲しいものって違うんです。漬物屋さんに太い大根を送っても使いづらいし、料理屋さんで刺身のツマにするなら、歩留まりのいい無駄のないものがいい。出荷先の欲しいものを送るには、人が1つ1つ考えて設計しないといけないし、そういうことをしていれば、自ずと単価が上がります。私としては、機械で均一に作るというより、お客様のオーダーに応えることで農業の未来が拓けていくんじゃないかと思ってます。

市場よりも企業に出荷することのほうが多い岡本さんらしいですね。

うちはほぼ自社生産、自社販売ですから。大根の作付けの半分は加工契約、半分はフリーにしておいて、買い手がいなければ市場に出荷という感じですね。全部契約にしちゃうと、チャンスがきたときに生かせないじゃないですか。スポットの注文もありますし。

エリアで言うとどのあたりに出荷しているんですか?

一番出荷量が多いのが関西。一番遠くて鹿児島、ほかに名古屋、九州、関東も少し。

企業相手なら営業先はご自分で見つけないといけないですよね?

価格が低迷して「ヤバい!」と思ったときは、食品加工会社に営業電話をかけまくりました。ふだんからスーパーに行っても、大根を使った商品はどこで誰が作っているのか全部チェックしていますし。

電話で成約に結びついた例も?

あります。そこからまた紹介していただいたり。ニーズに応えることができているから、何度も注文していただけたり紹介していただけたりするんだと思っています。

十和田市の農業法人の今後は?

うちの会社でいうと、輸入野菜に対抗するために一次加工とか、パックして納めるパックセンターを作ろうかとか、六次化も考えています。

最終製品まで作るのも、一次加工をして次の加工業者さんに渡すのも、野菜そのものを消費者に直接売るのも、色々な売り方に挑戦するわけですね。そんな米田さんの独自性や竹ヶ原さんのブレない姿勢、岡本さんはしっかりお客様と向き合う。三者三様、同じ農業ビジネスでも、その人次第で色々な展開があると教わった気がします。十和田市での【農業×起業】の可能性を感じました。ありがとうございました!!

ありがとうございました。

今回の取材場所

市民交流プラザ トワーレ

 隈研吾氏設計の市民交流プラザ「トワーレ」は、「みちと広場を融合させたにぎわいの広場」をコンセプトに平成26年10月14日にオープンしました。
 イベントの他、市民活動支援ゾーン、たまり場ゾーン、子育て支援ゾーンなど多数の用途で市民から利用されています。
 気軽に立ち寄れる場所となっていますので是非ご利用下さい。
住所:〒034-0011 青森県十和田市 稲生町18-33
TEL:0176-58-5670
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