とわだを読む 日々の語LOG

TOWADA HIBI COLLECTION WEB MAGAZINE

BACK NUMBER

地域子育て支援センター取材レポート 後編

  • 社会福祉法人北心会 小さな森こども園 地域子育て支援センター「どろんこ」室長
    金渕まゆみ

    1965年十和田市生まれ。保育教諭。無認可保育園の頃から携わり、2002年、同園が認可保育園となると同時に設置された同センターの室長に就任。

    小さな森こども園
    http://www.hokushinkai-towada.jp/

ママの元気が、子どもの笑顔のもと! 子育て支援でリフレッシュ

 ボクも私もお手伝いして焼き上げたピザは、世界一の美味しさ⁉ ペロリと平らげた後は、ハイハイしたり手作りおもちゃを手に取ったりと、思い思いに楽しむ子どもたち。そんな様子を見守りながら、ママたちもお喋りに花を咲かせます。

 親子ともに、我が家のようにくつろぐ姿が印象的。このリラックスした雰囲気を縁の下で支えているのは、子育て支援センター室長の金渕まゆみさんとスタッフの下山千春さんです。

 およそ15年前に同センターが開設された当初から室長を務める金渕さん。ハンディのあるお子さんを持つお父さん、お母さんのサークル「サークルくれよん」や、妊婦さんから1歳ぐらいのお子さんをお持ちのお母さん向けの「プレママクラブ」、初めてで勇気が出ないお母さんには、予約制の園解放「スペシャルデー」など、「どろんこ」らしい支援の在り方を作り上げてきました。

 「毎日頑張るお母さんに、元気になってほしい」と語る金渕さんに、センターの役割や利用者のリアルを聞いてみました。

こちらを利用するには利用登録が必要なんですよね。現在、登録されている親子はどのくらい?

75組です。そのうち毎月来てくれるのが10~20組ぐらい。ヨガや離乳食講座は人気がありますね。

ヨガは特にママさんに人気がありそう! こちらでは多彩な活動をされていますね。どういったものがありますか?

まず、毎日の園解放と育児相談。園解放では園庭でこども園の子たちと一緒に外遊びをしています。「どろんこ」っていう名前は園長が付けたんですが、「どろんこになって元気に遊んでほしい」って。うちでは外での活動もけっこう多いですね。自然の中で思いっきり遊ぶことで、心が育つ。まずは心を育てていかないと、大人になった時に心がぐしゃっと潰れてしまいやすい。今はそういう大人が多くなってしまっている気がします。

自然の中で子育て、いいですね。季節ごとにどんなことをするんですか?

春はすぐそこにある遊歩道を散歩してお花見。夏は法人全体のお祭り「北心祭」に、センターを利用しているお母さんたちに来てもらったり、バザーのお手伝いをしてもらったり。冬は節分や雪灯篭祭りです。毎年、降る雪を集めて遊歩道に雪像を作るんです。雪像の周りに明かりを灯してライトアップして。2~3日前に親御さんやご近所さんにお知らせを出して、見に来ていただきます。2月後半には、”春を呼ぶ”と言われている伝統芸能「八戸えんぶり」の舞い手さんたちを八戸市から呼んで園庭で鑑賞します。園の子どもたちや親御さん、ご近所の方もお呼びしているんですよ。

定期イベントにはどんなものがありますか?

毎週火曜日と金曜日がイベントの日です。毎月第3金曜にはヨガインストラクターの安斉香先生に来ていただいて、親子ヨガをやっています。また、月2回、Foot step(フットステップ)の福地幸恵先生によるヒップホップダンス教室もやっています。月1回の離乳食講座は栄養士さんと助産師さんに来ていただいて、初期・中期・後期と、年に3サイクル実施します。栄養の話を聞いたり、料理を実践したり。お母さんが負担なく続けられるよう、ふだんのお料理から取り分けて作れる離乳食を紹介しています。

なるほど。

特にクリスマスパーティはうちの自慢かな。11月末になると毎週土曜日、子ども園も含めてクラスごとに開催するんです。クリスマス” 会”ではなくパーティなので、お母さん達には「おしゃれしてきてね」って言うんです。お母さんは忙しくて、おしゃれして出かけるなんてあまりできないでしょう? 円卓を囲んで、給食の先生や私たち保育教諭が作った料理やケーキを食べて。ミニバイオリンコンサートやダンスを楽しんで、園長先生からプレゼントをもらって帰る。1年で一番大きなイベントであり、ママたちへのプレゼントです。

参加する側からしたら、「ママが楽しめるように」という心遣いが感じられて嬉しいですよね。子育て支援=ママの支援の意味合いが大きい?

お母さんがここに来てお友だちができて、気分転換して、子育てを楽しめるようになってくれればいいなと。お母さんに元気になってほしいんです。お母さんが元気だと、子どもも元気になりますから。だから私たちスタッフもお友だちのように、子育て以外のことでも色々話をしますよ。雑談の中で悩みを打ち明けてくれることもあるので、お母さんたちが話しやすい空間、雰囲気づくりは大事にしています。

確かに! 今日お邪魔して見ていても、先生方や参加者同士が「髪切った?」とか「大きくなったね」とか声をかけあっていて、友だちみたい。開かれた雰囲気ですよね。いろんなママさんがいらっしゃると思いますが、移住してきた親子さんも多いですか?

ヨガインストラクターの安斉香先生もUターンしてきた方ですし、参加者も定期的に来る方、いますよ。個人的なことに突っ込まれると嫌な方もいるので、こちらから聞いたりってことはしないですが。たまたま会話の中で「転勤で来たんだ」とか、分かるぐらいです。

地元だから、移住だからと特に意識する必要はないということですよね。

はい。十和田市内で7カ所の子育て支援センターがあるので、自分に合うところ、その場で自分が出せて楽になれるところを探してみるのがいいと思います。ここに来るお母さんたちは、お手伝いもよくしてくれますよ。「私はスタッフ」「私は参加者」と分けるより、一緒にいい時間を作って「じゃあね、またね。」そういう感じ。一緒に作業をする中で色々な話ができるので、そうやって話してリフレッシュして、楽しく子育てをしてくれたらなと。楽しくないと続かないと思うので。大人がまず楽しんでやると、子どもも楽しくなりますよね。

育児相談では、よくある相談や印象に残っているものってありますか?

やっぱり、発達についてですね。「うちの子、寝返りしないんだけど」とか、「歩かない」、「キーキー言うんだけど大丈夫?」とか。月齢・年齢があがるにつれて、心の発達についての相談も増えます。私がここで受けられることは受けて、対応しきれないものは園長にバトンタッチします。うちは同じ法人内に障害児通所支援もあるので、そちらにつないだ方がいい子はそうします。早く適切な対処をした方がもちろんいいですから。仮にどこか弱い点があったとしても、うちの園では特別な目では見ません。レッテルを貼るってこともないし。

発達は関わり方一つで変わってきます。一番大事なのは0歳の時、お母さんと子どもが2人でいる時期です。おっぱいをあげている時、子どもがいくら飲みながらお母さんの顔を見たり触ったりしても、お母さんがスマートフォンをいじったり、意識を他に向けていると、愛着形成がうまくいかなくなり、色々な面で影響が出てくることがあります。だからそこが一番大事な時期なんだけど、その時期はママがブルーになりやすい時期でもある。

子育てをする中では、要所要所で悩んで、乗り越えていかないといけない時期があるのは仕方ない。それよりむしろ、心が弱りやすい大人が増えているということだと思うんです。昔は勢いのまま子育てして、気がついたら子どもが大きくなっている…みたいな感じだったと思うんですよ。今のママたちの中には、「この子のために…」って頑張りすぎる人もいます。一時預かりはいろんな保育園・認定こども園でやっているので、「預けてママがリフレッシュしてもいいんじゃない?」と言っても、「働いていないのに子どもに申し訳ないから」と。「ママだって息抜きをしてもいい」と思ってもらえるまで、意外と時間がかかったりします。

ママが元気でいないと子どもも困る。ママのリフレッシュは大事なんですね。ママが働いていてもいなくても、発達に気になるところがあっても、受け入れてもらえる。包括的な支援が受けられるのは嬉しいですよね。

いろんな人がいて当たり前、いろんな子がいて当たり前なんです。相談に来たお母さんの中には、「子どもが寝てからスマホを見る時間が唯一、自分の時間なんです」って言う人もいました。でもそれをやっていると睡眠不足になって、睡眠不足だとイライラしてきて…ってことも起こりえます。それなら思い切って昼間、時間を作った方がいいんじゃないでしょうか。

情報機器に関しては、今の子どもたちは身近にあるのが当たり前の中で育ちますから、感覚も昔とは違っている?

そうですね。でも子どもが小さいうちは、やっぱり親が判断しないと。電磁波の子どもへの影響もデータが出ていますから。大人になればそういった機器を使って仕事をするのが当たり前でしょうけど、心も体も柔らかい幼児のうちは、自然に触れて元気いっぱいに遊ばせてあげたら、生きていく力が育つんじゃないかなって思うんですよ。だからここでは携帯電話は原則、禁止にしています。

これからの活動で考えていることはありますか?

もっと外に飛び出したいなと思っています。市内7カ所の子育て支援センターが当番制で月に1回、イオンの遊びコーナーに行くという企画は、今もやっています。2月はうちの番ですね。あとは、市保健センターに行って健診の時に遊びの時間を行ったりもしていますし。これからはさらにその他に、自分たちで企画して外に飛び出せればいいなと。5月に児童福祉週間がありまして、そこで何かできないかと、市の方たちと一緒に企画を練っています。去年のその時期はそれぞれの子育て支援センターで企画して、私たちは十和田市現代美術館のアート広場で「青空ヨガ」をしました。今年はさらに一歩進んで、7カ所の子育て支援センターがまとまって何かできればと思っています。

ありがとうございました!

子育て支援センター取材レポート完結。

市内7ヵ所にある、地域子育て支援センターの情報はこちらからご覧ください。
https://www.city.towada.lg.jp/fukushi/kosodate/jidou/kosodate_shien_center.html

十和田市での子育て支援情報発信サイト「とわだDE子育て応援ナビ」が便利です!
https://www.city.towada.lg.jp/fukushi/kosodate/kosodatenavi.html

今回の取材場所

小さな森こども園 地域子育て支援センターどろんこ

「小さな森こども園」は、自然保育、どろんこ保育、遊びの保障を徹底して行っています。
また、現代的課題である心の育ちを重視し、日本の古来からの伝統を重んじ、保育者による昔話などの語り聞かせ、伝承遊びを取り入れています。
住所:〒034-0095 青森県十和田市西二十一番町6−14
TEL:0176-23-4793
PAGE TOP