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地域おこし協力隊×社会起業
~ちょっと難しいのはわかっているけど、十和田市だから挑戦してみたい~


「地域おこし協力隊」は、さまざまな人が地方へ移住し、地域の課題解決に向けた協力活動をしながら、その地域への定住・定着を図る取り組み。十和田市では移住支援を強化するため、今年新たに地域おこし協力隊員として「移住コンシェルジュ」を採用。着任した彼女には、もう1つ、ここで叶えたいことがあるといいます。

  • わたなべ ゆうみ
    渡邊 ゆうみ

    1998年、埼玉県出身。埼玉県内の高校を卒業後、エネルギー関連業をはじめさまざまな職種を経験。仕事で知り合った2人の仲間とともに起業を志し、2023年8月、仲間の1人の出身地である十和田市へ移住。十和田市移住コンシェルジュに着任するとともに「Livvy(リヴィー)」の名で起業準備中。

リゾートバイトで出会った個性豊かな3人が起業を目指し、移住

なぜ十和田市に移住されたんですか?

私がここに来た理由としては、起業するためです。私を含めて3人でやろうとしていて、そのうちの1人が十和田市出身なんですね。3人で十和田市の街を活性化したい、商店街をシャッター通りではなくしたい。そのための事業を準備中です。

まちを活性化するために起業。メンバーのお一人が十和田市の出身…気になることがいっぱいですが。まずは、どんな風に話が決まっていったんですか?

みんなリゾートバイトで働いている時に知り合って、意気投合して今につながりました。私のほかにメンバーが2人です。

お仕事で知り合ったんですね。それにしても移住に起業。人生の重大な決断だと思いますが、不安はありませんでしたか?

私自身、あまりすごいことだと思っていなくて…。これまでいろいろな職種を経験していく中で、起業したいなという考えがあったので、働きながらお金を貯めていたんです。
前職は美容業だったんですが、その前は住み込みのリゾートバイトで日本のあちこちに行っていました。元々旅行も好きで色々な土地に行っていたので、 住む場所を変えることにあまり抵抗はなかったんです。

ちなみにリゾートバイトではどんなところに行っていたんですか?

静岡県の伊豆・下田のリゾートとか、三重県の伊勢市。箱根も行きましたし、新潟もいいところでした。あとは長野、山梨。大学生もいれば50代の方もいるような環境でした。1~2ヶ月ぐらいのスパンで移動する形で私は働いていました。1カ所で長く働く方もいるんですけど、私はできるだけいろんな方と出会いたかったんです。

いろんな人と出会ってみたいっていうのが、お仕事に求めていたことだったんですね。

あとはもちろん、お金を貯めて何かできたらと考えていました。会社で働くのももちろん楽しかったんですけど、自分で何かをしてみたいという気持ちはずっと持っていました。1人で考えている時は漠然としていたのですが、そんな時に静岡のリゾートホテルで今の仲間に出会いました。十和田市出身の人は、地元にずっと熱い思いを持っていて、話を聞いているうちに、一緒にやろうか、と考えるようになりました。

ゆうみさんから見てどんな3人ですか?

3人それぞれ、特徴とか得意なことも全部違って補い合っていると思います。
1人は十和田市出身でアイデアマン。本当にアイデアがいっぱい出てくるので、その人を中心に企画を進めることが多いですね。また、企画がスムーズに進むようマネジメントもしてくれます。
もう1人は現役大学生なのですが、行動力とSNSの発信力がすごい。うちの営業マンでありムードメーカーです。アルバイトで携帯電話の販売をしていた時に、周りのスタッフがみんな契約7~8件のところ、50件くらい契約を取ってトップになったとかで(笑)。
私は商業高校出身で、簿記とか事務系の資格を持っているので、契約とか事務の手続き、経理をやっています。

チームワークが良さそうですね。

一言で「みんな大好き」って言うと単純すぎるんですけど(笑)。大切な仲間です。

あらためて、十和田市で起業する決め手はなんですか?

私の出身の埼玉やもう1人のメンバーの出身の東京では、正直、埋もれてしまう…ちょっと難しいっていうのはわかっているんですけど、十和田市は、人口6万人弱。田舎すぎず、都会すぎず。この地域で事業が成功できれば、おそらく、どこの地域でも自信をもって仕事できるんじゃないかと思ったんです。あとはもちろん、メンバーの1人の出身地という理由もあります。家族がいて、応援してくれる人がいる環境の方がやりやすいと思ったので。

官庁街通りと温かい市民性が、起業家に優しい?

今のお仕事に就いたきっかけをおうかがいします。

リゾートバイトの時に長野の地域おこし協力隊員とも出会っていて、制度があるのは知っていました。十和田市にもあるのかなって調べてみたらちょうど募集していて、市役所に直接聞きに行き、やってみたいなという気持ちが強くなりました。
ただ、移住コンシェルジュとして働くとなると平日昼間は起業のための時間が取れなくなるので、メンバーのみんなに相談したら「いろんな形で地域の人に関われるからいいよ」って背中を押してくれて、すぐに応募しました。

現時点の十和田市の印象は?

地元と少し似ている気がします。

それはどういうところですか?

移住する前は“青森”ってだけで失礼ながら「すごい田舎で何もない」みたいな印象でしたが…たくさんありました! 服屋さんも飲食店もあるし生活に困らない。官庁街通りに市役所、保健所、消防署など大事なものがギュッと凝縮しているのが大きな魅力です。
いろんな地域に行きましたが、行政機関がコンパクトに整然と並んでいる街並みは、そんなにあるものではないと思います。私は初めて見ました。車がないと生活に困るエリアではありますが、街中まで来てしまえば後はワンストップに近い形で色々な手続きが済むって、便利だと思います。

コンパクトゆえの便利さなんですね。

起業する側の目線で見ると特に便利です。1日でたくさん手続きを進めたい時には、点在していると困りますよね。この前も、保健所に用事があって電話したのが午前11時ぐらいで、「午後から出かけるから今から来れる?」と言われて、すぐに行って話ができた、ということがありました。
起業する側の目線でなくても、色々な立場の人にとって良いですよね。お子さんがいらっしゃる方なら、市役所と病院と図書館が近いと便利だろうし、お仕事している方が平日にお休み取って用事を済ませるとしたら、あれもこれもやっておきたいじゃないですか。

なるほど。起業したい人にフィットする街、かもしれないですね。もう少し、街の魅力についてうかがってもいいですか?

人はやっぱり優しいと思います。こうやって私みたいに、県外から来た人にも親身になってくれる方が多いです。印象としては、話しかければ喋るのに、自分から話す方は少ない。だから移住してきた人は、地元の方にいっぱい話しかけてほしいです。皆さん、聞けばいっぱい教えてくれますよ。
なんとなく来ても過ごしやすいと思いますけど、やりたいことが明確な状態で来たら、けっこう実現度が高いんじゃないですかね。皆さんに色々教えてもらいながら官庁街通りでスムーズに手続きできるので。
あと、バーベキューがすぐできるのが羨ましい! バーベキューって人の心を開放的にするじゃないですか。コンシェルジュとしてか、もしくは自主事業としてかは分からないですけど、何か企画してみるのもアリかなと思っています。

十和田市の活性化を目指して起業ということで、コンシェルジュのお仕事とも深く関わってきそうですね。ではコンシェルジュとしての、これからのビジョンはありますか?

一番に思っているのは、Instagramを使って何かできないか。先々のことも考えて、今は青森県内各地の魅力を発信するInstagramの運用をしています。その経験を生かして、コンシェルジュとしても地域の移住、定住に向けたInstagramの運用はどうかなと考えています。コンシェルジュの活動は自由度が高いので、自分から手を挙げてできることからやるというのは、起業に通じる働き方かもしれません。

お気に入りがいっぱいのまちに、人が集まる時間・空間をつくる

お仕事以外で夢中になっていることもお聞きしたいのですが、やはり起業ですよね?

はい! 「Livvy(リヴィー)」を活動の名前にしています。現在は主にSNS運用を行っていて、Instagramがメインです。
Instagramでは青森全体のグルメや観光について発信していて、おかげさまでフォロワーさんもだいぶ増えてきました。取材のリクエストをいただくことも増えてきて、この前は弘前市のアイス屋さんに行きました。フォロワーさんや取材先の方とつながりが増えてきて嬉しいですね。

県内を回られているとのことですが、十和田市でも地元とのつながりやお気に入りスポットなどはできましたか?

株式会社ビーコーズのみなさんとつながって、そこから人を紹介していただきました。あとはうちの営業マンが、すぐ誰かに話しかけに行っちゃう人なので(笑)。足りないものがあったら持っていそうな人に聞きに行っちゃうとか(笑)。そんな感じで少しずつ広がっています。
お気に入りの場所も、ビーコーズさんの「second.」とか色々あるのですが、大学通りの「Street Smart Coffee」さんは十和田市に来た当初からお世話になっています。コーヒーもケーキもおいしいのはもちろんなんですけど、店主ご夫妻がもう、多分、十和田市で一番優しい人だと思います!

すごく思い入れがあるんですね。

最初、偶然出会ったんですよ。来て間もないある日に商談があって、青森市から人が来てくれたんですが、指定したカフェがなんと休みで…。焦って他のお店にも電話したけどどこも休みで。そんな中、Street Smart Coffeeさんだけ空いていて、快く受け入れてくださったんです。その時に店主さんが私たちの話を聞いてくれて、ビーコーズさんやサンバスタンドさんとか十和田市内のことについていろいろと教えてくださって。そこから一気につながりが広がったんです。人柄がいいんですよ、本当に。
だから、お世話になっている人のところはお気に入りになっちゃうじゃないですか。ほかにもいっぱいあって、「遠田酒店」さんも好きだし、「Schuzlmithernic Life(シュツルマイザニックライフ)」さんも可愛いし…。

  • Street Smart Coffee にて

まだまだ出そうですね。一方で、やはり地域に課題はある。ゆうみさんたちのLivvyでは、その解決を目指して事業を興そうとしているんですよね。

はい。十和田市出身のメンバーと話をしていたら、「大学生の時に遊ぶ場所がもっと欲しかった」と言っていて、それって今の学生さんも同じだと思うんですよ。だから、若者向けにお店を作るのが1つの目標です。若者が集える場所を作りたいというのがまず1つ。あとは、現役世代というのかな、子育て世代だったり、働いている年代の人がもっと増えればなと思います。

まちに人を増やしたいということですか?

そうですね。その足掛かりとして1つ予定しているのが、十和田市秋まつりでのイベントです。毎年9月の第2週末に中心街で開催されるお祭りなんですが、祭り期間中は例年、中心街の広い駐車スペースが使われていないと聞いたので、そこを活用して今年はキッチンカーを集めたイベントをやります。先日、近隣店舗のみなさんに集まっていただいて説明会を開きました。関係者の要望なども聞けましたし、快くご協力いただけるとのことで、安心しました。私たちのオフラインでの事業第1号です。

おいしいものがあると行きたくなります。確かに人が集まりそうですね。

いろんな土地からキッチンカーで出店してもらうので、その方々にまちの様子や商店街の現状を見ていただく、SNSでPRしていただく狙いもあります。まず、いろんな人と出会うというのも目的ですね。

リゾートバイトのお話の中でも「たくさんの人と出会いたい」という言葉が出てきましたね。ゆうみさんにとって、人との出会いはどんな意味がありますか?

うーん…。人生で一番必要で、なくてはならないもの。楽しく新鮮で、刺激をもたらしてくれるもの、でしょうか。私はいつも人に助けられてきたと思っていて。自分と違う考えを持ったいろんな方と触れ合ってきたからこそ、十和田市にたどり着いて、起業を目指すことになりました。

なるほど。出会いに導かれて今がある。移住コンシェルジュとしてもLivvyの一員としても、これからどんな出会いが待っているのか、楽しみですね。またお話を聞かせてください。今日はどうもありがとうございました。

ありがとうございました!

今回の取材場所

十和田市役所

〒034-8615 青森県十和田市西十二番町6−1
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