まずは、お二人が「エンゼル」を訪れるようになったきっかけを教えてください。
すずき
鈴木
岩手県山田町出身。夫と長男・稟人(りんと)くん(9か月)の3人暮らし。2025年3月、宮城県岩沼市から夫の転勤で十和田市へ。子育て支援センター利用歴は約6か月。
よもぎだ
蓬田
宮城県塩釜市出身。夫、長女(2歳)、長男・梨人(りひと)くん(8か月)の4人家族。2023年、埼玉県春日部市から移住。長女が生後3か月頃から子育て支援センターを利用。
ひさの かずこ
久野 和子
十和田めぐみ保育園・子育て支援センター「エンゼル」センター長。保育士歴50年。開設当初から地域の親子を支え続けている。
ささき ゆい
佐々木 唯
同センター子育て支援員。支援員歴10年、三人の子の母としての経験を生かし、ママたちの相談に寄り添う。
まずは、お二人が「エンゼル」を訪れるようになったきっかけを教えてください。
離乳食教室がきっかけです。引っ越してきたばかりの頃、十和田市の子育てアプリでイベント情報を見つけて行ってみたんです。知り合いもいないし、初めての育児だし、不安でいっぱいでした。だから、誰かと話せる場所があるのが本当にうれしかったですね。
私は上の子が生後3か月の頃、「ほっとマミーサロン」に参加したのが始まりでした。ベビーマッサージ講座のあとにママ同士が話せる時間があって、「誰かとつながりたい!」っていう思いで参加しました。そこで知り合った先輩ママに教えてもらって、エンゼルに通うようになったんです。
実際に通ってみて、どんな時間を過ごしていますか?
週1〜2回ペースで利用しています。おもちゃで遊んで、離乳食を食べさせて、私もお昼を食べて。朝はだいたい10時頃に来て、14時30分の閉所時間いっぱいまでゆったり過ごす日もあります。
うちは長女が隣の保育園に通っているので、送り届けた足でここに寄ることが多いですね。冷蔵庫や電子レンジが使えるのも助かります。離乳食を持参して温めて食べさせられるので、まるで自分の家みたい。
知らない土地で初めての子育てをするって、想像以上に心細いものです。ここに来て「悩んでいるのは私だけじゃないんだ」と思えるようになりました。
大人と話せるのがうれしいんですよね(笑)。「分かる〜!」って共感し合えるだけで気持ちが軽くなる。私もここに来て知り合いが増えたし、長女が赤ちゃんのときに出会ったママ友とは今も友達です。
ママ同士のつながりが生まれているようですね。
赤ちゃんが泣いたらみんなであやして、誰かの荷物を自然に持ってあげたりして。そんな小さなやりとりが心地いい。ここでは、“助け合う”が当たり前になっている気がします。
支援センターの良さは、親同士が自然につながっていくこと。担当者が間に入らなくても、お母さんたちが自分たちで声をかけ合っていく。そうやって地域の輪が少しずつ広がっていくのを見るのが、何よりうれしいですね。
先生方が温かく接してくださるのもうれしいんですよ。
たしかに、支援員さんと皆さんの距離も近いですよね。
週に何度も顔を合わせていると、家族か親戚みたいな距離感になります。
うちの子は、祖父母より先生方のほうが会っている回数が多いかもしれません。息子は先生方に抱っこしてもらっても泣かないし、安心しきってます。
先生たちがいつも話を聞いてくれるし、ちょっとした悩みも受け止めてくれるから、私自身も頼りにしてます。子どもの体調や発達のことって、スマホで調べても当てはまる情報がないこともあるし、不安が残るじゃないですか。市役所や保健センターに相談するのはハードルが高いけど、ここでは「こんなこと聞いてもいいのかな?」ってことも気軽に話せるんです。
例えばどんなことを相談するんですか?
息子が離乳食を全然食べてくれない時期に相談しました。食べさせようとしてもあまりにも嫌がるので、病気だったらどうしよう…と不安になって。そうしたら「ドロドロした食感が苦手な子もいるよ」とアドバイスをもらって、食感を工夫したら食べてくれるようになって。先生たちは、ちょっとした変化も気づいてくれるんです。
エンゼルは開設して20年以上になります。前任のセンター長も私たちも、ずっと「お母さんの居場所を作りたい」という思いでやってきました。特に転勤族のご家族は孤立しやすいので、安心できる居場所をつくることを心がけています。ここでは来て下さる親子さんが主役ですから、私たちはとにかく話を聞かせてもらっています。何でも気楽に話してくださいね。
親子の笑顔を見ると、こちらも元気をもらえます。お母さんたちの話をじっくり聞ける時間がうれしいんです。
イベントも人気があるそうですね。
毎月の身体測定は楽しみです。身長・体重を測ってもらって、足型を取ってアート作品にもしてくれるんですよ。毎月の成長を記録するカードも先生方の手作りで、可愛いんです。毎月カードを入れているファイルを開くと季節ごとの貼り絵が並んでいて、このファイルは宝物です。
私は年に3~4回くらいあるフリーマーケットが好きです。おさがりの服やおもちゃが手に入るし、キッチンカーも来たりしてにぎやか。家計的にも助かるし、ふだんエンゼルを利用している人も遊びに来られるので、色んな方が一緒に楽しんでいますよね。
春はお花見、夏は水遊び、秋はりんご狩りやじゃがいも掘り。地元の学校や地域の協力をいただきながら、季節ごとに体験を企画しています。地元のみなさんの支えがあってこそ、子どもたちにさまざまな体験をさせてあげられるんです。
十和田での暮らしはいかがですか?
空気も水も本当においしいです。にんにくや長いもも新鮮で、食卓が豊かになりました。人も親切で、スーパーで荷物を持ってくれる方もいて。ちょっとした優しさが多いまちだと思います。
病院やお店も近くて、生活に困ることはありません。小児科でも長時間待たされることもなく、スムーズに診察が受けられました。街がコンパクトで移動しやすいし、ベビーカーでも歩ける道が多いのが助かります。
冬はやっぱり大変ですけどね…。雪の日は公園では遊べないし、支援センターが開いているのが平日だけなので、週末の遊び場がもう少し増えたらうれしいです。
私はこの冬が初体験です。「十和田は雪が少ない」と言われているけど、どうなんでしょう?
あくまでも“青森県の中では”雪が少ないってことだと思う(笑)。朝、雪かきをしないと車を出せないこともありましたよ。
そうか…覚悟しておかないと(笑)。
でも、子どもは雪が降ると大喜び。雪遊びできるのは雪国ならではの魅力ですよね。冬場の遊ぶ場としては、来年「トワーレ」がリニューアルして遊べるスペースが広がると聞いて、楽しみにしています。
移住して変わったことといえば、私は十和田に来て、食べる楽しみが増えました。この前は十和田湖までドライブしてアップルパイを食べてきました。
子育て環境について、もう少し聞かせてください。蓬田さんのお子さんは、隣の保育園に通っているとか。
はい。4園見学して、どこも丁寧に対応してくれました。最終的にみきの保育園に決めたのは、エンゼルで先生方と顔見知りだったから。娘もすぐになじみました。朝、園に着くと先生のところに一直線です。
市内7か所の子育て支援センターは、すべて保育園やこども園が母体です。園との交流も活発で、行事を通じて自然に顔見知りが増えていきます。
出産前から利用できるサークルもありますし、「いつからでも来ていい場所」であることを伝えたいですね。
最後に、これから十和田で子育てを始める方、移住を考えている方にメッセージをお願いします。
地域の中で、たくさんつながりを作ってほしいです。最初の一歩は勇気がいるけど、そこを越えたら楽しいことがいっぱいあります。迷ったら、まず子育て支援センターに電話してみて。きっと誰かが待っていてくれます。私が登録しているファミリー・サポート・センターも心強い味方ですよ。
エンゼルに出会ってから、毎日が本当に明るくなりました。ここで出会った仲間と、これからも一緒に子育てしていけたらうれしいです。
子どもを中心に、保護者や地域がゆるやかにつながっていく。その入り口として、子育て中の親子ならいつからでも、誰でも利用できる子育て支援センターが機能しているんですね。今日はありがとうございました。
~今回登場した十和田の子育て支援施設・イベント・ツール~
十和田市地域子育て支援センター(総合案内)
https://www.city.towada.lg.jp/fukushi/kosodate/jidou/kosodate_shien_center.html
子育て中の親子であれば自由に利用できる子育て支援拠点。市内7カ所に設置されており、支援員の見守りのもと、親子同士が交流したり、月齢に合わせたプログラムやイベントに参加したりできます。運営は地域の保育所・認定こども園が担っています。
とわだ子育てアプリ(母子手帳アプリ「母子モ」)
https://www.city.towada.lg.jp/fukushi/kosodate/2022-0523-1107-115.html
紙の母子手帳とあわせて使える母子手帳アプリ。予防接種のスケジュール管理機能や子どもの成長記録機能、地域の子育て情報配信機能などで子育てをサポート。
十和田ファミリー・サポート・センター
https://www.city.towada.lg.jp/fukushi/kosodate/jidou/family_support_center.html
地域に住む子育ての支援を受けたい人(利用会員)と、支援を行いたい人(支援会員)とが会員となり、育児について助け合う仕組みです。会員登録を行えば利用できます。
十和田市では、地域の子育て支援拠点として7か所の子育て支援センターを設置し、親子の居場所づくりを進めています。今回はそのひとつ、子育て支援センター「エンゼル」を訪問。パートナーの転勤を機に移住し、ここで子育てを始めた二人のママに、子育て支援センターでの日常や十和田での子育てについてお話をうかがいました。今日もここでは、笑い声とあたたかなまなざしの中で、小さな十和田の物語が育まれています。