とわだを読む 日々の語LOG

TOWADA HIBI COLLECTION WEB MAGAZINE

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031 “移住9年生” があたらしい仲間をおもてなし
『移住者交流会in牛小屋音楽会』

  • さかもと まさとし
    坂本 雅利

    牛小屋音楽会主催者
    1951年生まれ。青森県三戸郡田子町出身。小学校から高校まで十和田市で過ごし、大学進学のため上京。卒業後は、商社系スーパーマーケットに就職し、2011年に退職。

  • さかもと よしこ
    坂本 淑子

    牛小屋音楽会主催者
    1952年生まれ。福島県田村郡小野町出身。大学時代に雅利さんと出会い結婚。小学校教諭を務め、2012年に退職。

  • おかざき だいすけ
    岡崎 大輔

    移住者(岡崎さんご夫婦)
    1980年生まれ。岡山県岡山市出身。人材開発・組織開発ファシリテーター/「を、編む」代表。

  • おかざき まき
    岡崎 真樹

    移住者(岡崎さんご夫婦)
    1983年生まれ。奈良県奈良市出身。十和田市現代美術館エデュケーター。美術館やアート作品に関するラーニングを担当。

  • すぎうら ゆうじ
    杉浦 裕志

    移住者(杉浦さんご夫婦)
    1986年生まれ。愛知県尾張旭市出身。「株式会社とり」社鳥(しゃちょう)。フィギュアの製作や工作ワークショップなど、ものづくりを中心に野鳥の魅力を伝えるための事業を展開。
    ◆株式会社とり 
    https://tori.co.jp/
     

  • すぎうら かなこ
    杉浦 香菜子

    移住者(杉浦さんご夫婦)
    1985年生まれ。青森県八戸市出身。同社、会鳥(かいちょう)。

十和田市では、移住者や移住希望者、地元住民が交流し、楽しみや不安などを共有することを目的とした移住者交流会を開催しました。
会場は、十和田市赤伏地区に移住して9年目の坂本雅利(さかもとまさとし)さん、淑子(よしこ)さん夫妻の住まいの一角、“牛小屋”です。
住居の横にあった元・牛舎をリフォームし、レコードコレクションやピアノを置き、「音楽ホール」に生まれ変わりました。テラスからは四季を映す山並みが一望できます。バンド演奏に玉すだれパフォーマンス、個性豊かな参加者の会話も弾み、笑顔でもてなしてくれました。


坂本さん夫妻の第1回インタビュー記事はこちら
https://towada-iju.com/interview/006.php

移住から9年。十和田暮らしはどうですか?交流会開催直前、坂本さん夫妻にインタビュー。“移住9年生”から見た十和田とは?

2012年に移住して現在9年目。コロナ禍以前は年2回、牛小屋音楽会を開き、毎回、十和田市内外から100人以上の人が訪れる盛況ぶりでした。音楽活動にはコロナの影響もあったかと思いますが、十和田での暮らしで変わったところ、変わらないところはありますか?

それが全然変わらないよね(笑)。奥入瀬川付近の栗林で野外演奏会を開催して、川の音や風のささやきと共演したりしました。コロナ以降、牛小屋音楽会は控えているけど、練習は廃校になった滝沢小学校の体育館を借りて、地元の人たちと活動を続けています。音楽好きは急にはやめられない、止められないですね。十和田市のマンドリンクラブとかフラダンスのグループ、タイの舞踊やベリーダンスのグループなども参加してくれました。音楽を体で表しているような団体と組むと、動きがあるので、演奏も立体的になりますね。

コロナの影響によるエピソードなど他にはありましたか? 

コロナ前に呼ばれていたホールでのイベントがいくつも中止になったので、じゃあ外でやろうってんで三沢基地のゲート近くの路上で英語の歌を演奏したんですが、外国人の方は、振り向いてもくれなかった(笑)。南部訛りだから発音悪いのかなって思ったりして(笑)。栗林での野外演奏中にはイガ栗が落ちてきて、頭にささったりしてね(笑)。

 音楽仲間は、発表する機会を持たないとバラバラになってしまうんですよ。だから何か目標があるといいですよね。今日はうちのバンドのリードギターが来てますけど、彼はその林の向こうに住んでるんです。そこは五戸町なんですけど、ここは十和田市の西南端だからご近所なんです。

「音楽は人と人をつなぐ」って前回のインタビューでもおっしゃってましたが、まさに実現されていますね。失礼ですが、ギターの方はお二人のお子さんぐらいの年齢ですか?

平成生まれと言ってたから、末っ子って感じ(笑)。

生活面で変化はありましたか?

ありますね。定年退職してからは、妻と色々なことを見つめあう時間が増えました。その他のことだと、私は高校卒業するまで十和田市で育ったんだけど、その当時と比べて個人商店が少なくなりましたね。市街地の空き地にコンビニができたり、全国チェーンのお店ができたり。寂しさもあるので、楽しく生活しようと、移住を機に60歳でギターを始めました。歌声喫茶に出演してお友達を増やしています。

移住当時とは、自然だって変わりました。畑は耕作者が世代交代しているし。いつまで畑が耕されているか、この景色を見ていられるかは分からない。山も多分、奥の方はだいぶ伐採が進んでいるし。

集落の方もこの9年でさらに高齢化しているしな…。でも高齢者はすごいですよ。十和田のおいしいお店は、高齢者がやってる所がけっこうあるんですよ。都会より元気な気もします。

お気に入りのお店はありますか?

市民交流プラザ「トワーレ」の横にある目の前で天ぷらを揚げてくれて、天ぷら定食550円(税込み)のお店とか、肉屋直営のお店とか、ラーメン屋さんも美味しいですね。お菓子屋さんもアップルパイとか、おいしい所がいっぱいですよ。

生活を楽しまれているのが伝わってきます。

音楽好きの私は大音量でレコードや楽器を弾いたり聴いたりする時間があると楽しいですよ。楽しみといえば、妻が今、十和田市現代美術館の企画の手伝いなどを積極的にしてます。

たとえば、アーティストの方の宿泊先として我が家を提供して、ふれあったりするのが新鮮で元気をもらいました。現代美術館では今、市民と一緒に作り上げることも重視していて、まちなかに作品もどんどん出ています。そんな活動のお手伝いを楽しんでいます。

感動的な瞬間があるんです。たとえば「問題行動トリオ」(※②)の方々が、アート広場で公演の最後の仕上げをしていたとき。夕日の中でやってたら、そこへ遊んでた子どもたちが8人ぐらい、真似して、関わって、その光景が本当に素敵で。子どもたちが行列を作ったり、ダンサーの方に混ざったり、芝生で転がったり。生き生きとしていました。

※② 現代音楽とコンテンポラリーダンスの分野でそれぞれユニークな活動を続ける野村誠、砂連尾理、佐久間新によるユニット。アートによるまちづくりプロジェクト「Arts Towada」の 十周年を記念した企画展「インター + プレイ」展にて公演を行った。

そういえば新聞記者からメール来てたよ。「淑子さん踊ってました」って(笑)。

(笑)。(パフォーマンスの中で)玉すだれをやって、何をやってもうまくいかないっていうネタを即興でやったときだと思う。玉すだれは、ここに移住してきて地元の古老から引き継いだもの。ありがたいですよね、本当に。

10年近く暮らしてきて、今思う十和田の魅力は?

季節の変わり方がダイナミックで、春が訪れた時の喜びは格別。季節の中に包まれて変わっていく感じ。これはいいですね。私、メダカを飼っているんですよ。メダカの産卵時期、動かなくなる時期。生き物の営みや、景色、農家の皆さんの働く姿を見て季節を感じます。「稲刈りが終わると、カメムシがドーンとくるな」とか(笑)。

何年たっても感動は変わらないものですか?

感動って大げさなものじゃなく淡々と感じています。変わっていく中に自分たちが含まれているってこと自体が、都会とは違います。「お盆前に集落の住民が集まって草刈りをする」とか、季節によって人間の行動や、作付けする野菜も変わっていくからね。
移住して、新たな人とつながることで自分を見出せますね。何にもしないで感動は得られないんじゃないかな。

過疎化だというけれど私としてはちょうどいい人数と、この大自然のバランスが取れた、移住おすすめの場所ですね。住んだ人が自分のアイデアで、自分のペースで生きていくのにいい場所かなと思います。

本番前のお忙しい中、ありがとうございました。

いよいよ交流会がスタート!

参加者には親子連れが多いこともあってか、みんなのんびり。予定時刻より30分遅れてのスタートとなりましたが、不満を言う人はゼロでした。「“十和田時間” だね」なんて言いあいながらゆるゆると会は始まりました。

「牛小屋バンド」の雅利さんとリードギターの芦名さんが登場し演奏。ムード歌謡のアレンジ曲を披露しました。伊東ゆかりさんの「小指の想い出」に始まり、橋幸夫さんの「恋をするなら」で盛り上げて、加山雄三さんの名曲に雅利さんの青春時代を重ねて作詞作曲した「北野辺地(きたのへじ)ビーチインサマー」で締めくくり。バンド音楽に合わせてみんなが手拍子をとる楽しい時間でした。

次は淑子さんによる「赤伏玉すだれ」。もともと集落に伝わっていた芸を淑子さんが引き継ぎ、イベントなどで披露しています。48本の竹でできている玉すだれは、集落の裏山から竹を切り出し、削るところから作ったという淑子さんのお手製。釣り竿に橋など、参加者の開運を願って次々に技が繰り出されました。

最後は自由に交流。家族連れや退職後のUターン者、おためし移住中のクリエイター夫婦など、年代も境遇もさまざまな移住者たち11世帯がことばを交わしました。

たくさんの出会いが生まれた日。いかがでしたか?
交流会終了のあいさつが終わっても、参加者の多くが牛小屋に残っています。ドラムを叩いたり、ラジコンカーに乗ったりして遊ぶ子どもたち。おしゃべりに花を咲かせる大人たち。参加者に感想を聞いてみました。

<1組目>

岡崎大輔(おかざき だいすけ)さん・真樹(まき)さん
「旅行も含め東北に足を踏み入れたことがなかった」真樹さんと「岩手までしか来たことがなかった」大輔さん、そして長男の太朗(たろう)くんのファミリー。真樹さんの転職にともない2021年8月、京都から移住。

元・牛小屋でのコンサートつきの移住者交流会でした。いかがでしたか?

まず久々に生音で音楽が聴けたっていうことに感動しました。こういう場を行政がセッティングしてくれるっていうのもすごいし。ここに来る前は大きなまちに住んでいたせいか、行政と住民の近さに新鮮な驚きがありますね。ふだんから市役所に行っても、担当の方が名前を呼んで声をかけてくれるんですよ。移住者一人一人の顔と名前を覚えてくれてるって嬉しいじゃないですか。

美術館ボランティアの淑子さんとはお会いする機会が多いですが、ご主人とは初対面。お似合いですね~。日常では職場と家の往復になりがちなので、こういう移住者受け入れの入り口があるのが嬉しくって。

真樹さんは十和田市現代美術館のスタッフをされているんですよね。真樹さんの転職が移住のきっかけだとか?

そうなんです。知人から、十和田市現代美術館でエデュケーターを探しているという話が回ってきて。エデュケーターは「アート作品と鑑賞者をどうつなぐか」っていうことを考える仕事なんですけど。で、家族に相談したら…。

僕が「寒そうだし、雪とかどうすんの?」なんて言って。「最初からネガティブなことばっかり言うな!」って怒られました(笑)。僕もフリーランスで働くことを認めてもらっているので、やりたいことであればと、最終的には行ってみようかということで。今年の8月に引っ越してきました。

とすると移住してまだ3カ月ぐらい。今のところ、十和田暮らしをどう感じていますか?

アクセスの良さは感じますね。車で30分圏内に新幹線の駅もあるし、奥入瀬渓流の自然もあるし。レジャーでも仕事でも、思ってたより便利だなって。あと、保育園が選び放題なのもすごい。

私はやっぱり、美術館が街中にある環境が素晴らしいと思います。住んでいる人がそのことをより享受できたらいいなと思いますし、そのための仕組みを考えていきたい。街中の美術館として市民の皆さんとどう関係をつくるのかを探っていきたいっていうのが今の思いですね。

十和田市現代美術館は「アートを通した新しい体験を提供する開かれた施設」がコンセプトですし、これからますます市民参加型のアート活動が充実していきそうですね。新たな常設展示も加わり、楽しみです。ありがとうございました!

<2組目>

杉浦裕志(すぎうら ゆうじ)さん・香菜子(かなこ)さん
2021年1月に東京より移住。十和田市が運営する空き家バンクの活用や、不動産業のかたわら地域の魅力発信に取り組む生出隆雄(おいでたかお)さんの協力で物件を取得。奥入瀬渓流の玄関口・奥瀬地区で、築50年の住居を、大工さんの手を借りながら自分たちで改築中。

今日の演奏と交流会はいかがでしたか?

私たちは奥入瀬川のそばの奥瀬というところに拠点を作っているところで、こちら側(五戸町に隣接する赤伏地域)には来たことがなくて。私たちが暮らす奥瀬や焼山方面にも畑や里山はありますが、雰囲気が全然違っていて、いいなって思いました。十和田って広いんですね。色々散策してみたいです。

コロナの影響で人の集まる場所にずっと行けなかったから、生演奏も初対面の人との交流も久しぶり。楽しかったです。

移住にもコロナの影響はあるんですか?

はい、コロナがきっかけですね。以前は東京に住みながら私がワークショップやバードウォッチングのガイドをしていて、妻は都内のショップで働いていて。2人とも接客業だったので影響がすごく大きかったんですよ。ゆくゆくは自然の豊かな場所で暮らしたいと考えていたし、この際、私の地元の愛知か、妻の地元の青森に住もうと話しあって。十和田市さんに問い合わせたら、当時の担当の方が付箋がたっくさんついた資料を送ってくれたんですよ! 熱意を感じて、これは一度会いに行かなきゃなと。

十和田市の方も、生出さんに会いに行ったときも、親身になって細かいところまで相談に乗ってくれて。やりたいことを応援してくれる雰囲気をすごく感じましたね。

今(2021年11月初旬)は香菜子さんのご実家に住みながら物件をご自分たちで改築していて、年内には本格的に移住ということですね。自分たちで、って大変そうだけど楽しそう。

大変で楽しい…その通り(笑)。来るたびに「早くここに住みたいね」って言ってます。

私は「株式会社とり」という会社を2010年からやっていて、鳥のグッズを作ったり、スズメ型のバルーン遊具を展示したりということもやっています。これから店舗もつくろうと計画していて、弊社のオンラインショップで販売している商品を置いたり、そこを拠点にバードウォッチングガイドとかワークショップ、以前からやっている活動をしていく予定です。来月には引っ越しできそう。今年のお正月明けすぐに十和田に来てから1年近く、やっとという感じですね。

  • 「株式会社とり」で制作している野鳥たちのフィギュア。一点一点手作りで、野鳥の印象的なポーズや特徴を落とし込んでいる。親しみやすいスズメが一番人気。

1年弱の間、十和田を身近に感じながら過ごされてきたわけですね。今感じている魅力は?

自然ですね。山があって空が広くて。今日も紅葉がとてもきれいですけど、こんな風に季節を感じながら過ごせるのがいい。

私も、自然との距離が好き。深い自然がこんなに近いって贅沢です。

逆に十和田市へのリクエストというか、「もっとこうなったらいいのに」という点は?

十和田湖・奥入瀬渓流へのマイカー規制が強化されればいいな。今は日時限定で実施されていますけど、自然を守るためにはもう少し強い対策をしないといけないんじゃないかと。

そうだよね。十和田の自然は本当に素晴らしくて、だからこそ楽しむだけでなく守っていきたいです。農業や雑穀作りにも興味があるので、その辺りに関して、いずれ何かできたらいいなと思っています。

十和田の豊かな自然の中でどんな鳥に出会い、どういう風に発信されるのか、楽しみにしています。ありがとうございました!

今回の取材場所

坂本様ご夫婦ご自宅(牛小屋音楽会開催場所)

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