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013 「移住者さんと語ろう」 in十和田第一中学校 前編

  • ㈱Queen&Co.
    マイケル・ウォーレン

    1984年、アメリカ合衆国ミネソタ州生まれ。2004年、カリフォルニア大学ロサンゼルス校で学ぶためロサンゼルスへ。やがてJETプログラム(外国人の若者が日本の教育現場で国際交流・外国語教育に携わるプログラム)を利用して青森県に来ました。東京に住み、以前、移住者座談会に参加してくれたアレックス・クイーンさんとともに慶応大学の職員をしていた時期を経て、2人は2016年、㈱Queen&Co.を設立。十和田市に移住し、東京と十和田を行き来する生活を続けています。
    ㈱Queen&Co.
    http://queenand.co/company/

テーマは「教育」。

十和田第一中学校の特徴的なカリキュラム「ふるさと学習」の一環として行われた「移住者さんと語ろう」。移住者との交流を通してさまざまな生き方があることを知るとともに、地元の魅力を再発見することを主な目的としています。生徒たちは他にも、入学間もない頃から、街の観光資源や特産品などについて、ゲスト講師の授業やフィールドワークで学んできました。

マイケルさんと生徒たちが対話した授業の様子をレポートします。

2018年1月某日、畑に囲まれて建つ十和田第一中学校を訪れた目的は、2年生22名に向けて授業をすることでした。

まっすぐじゃない、夢の叶え方

初めての外国人ゲストを前に緊張気味の生徒たち。「僕の言いたいことよりもあなたたちが聞きたいことの方が大事だから」 以前は中学校で英語を教えていたマイケルさんが日本語で言うと、ホッとした表情を見せました。しかしここからは英語で。生徒があらかじめ考えてきた質問に、マイケルさんが答えていきます。

ある男子生徒はこんな質問をしました。
「Why did you come to Japan?」(なぜ日本に来たんですか?)

マイケルさんは逆に生徒たちに尋ねます。

Do you have a dream?(夢がある人は?)

クラスの2/3ほどが手を挙げました。

そう。僕にもあったよ。ロックスターになりたい、野球選手になりたい…とか。色々あったけど、すべてサヨナラ。どこかに行っちゃった。
代わりに叶えた夢は、たとえばミュージックフェスティバル。僕の後任のALT(外国語指導助手)が音楽好きで、五戸町で音楽イベントを開きたいというビジョンを持っていた。僕も音楽が好きだから、彼の背中を押した。アレックスは大学職員をしながら、10代を過ごした青森に帰りたいと思っていた。僕も青森が好きだし、一緒に青森で仕事を始めることにしたんだ。
どちらも個人的な夢じゃない。身近な人や友人の夢を助けて一緒に実現するのが、今の僕のやりたいこと。

十和田市中心街にあるオフィス兼コミュニティスペース「14-54(イチヨンゴーヨン)」でイベントを開催したり、お隣の五戸町で仲間とミュージックフェスティバルを開催したりと精力的に活動しているマイケルさん。けれど、それらは自分でも予期しないことだったといいます。

初めは1年でアメリカへ帰るつもりだったからね(笑)。でも友だちができて、楽しくて、もう1年、もう1年と延ばしていって…今があります。

「Who am I?」と「What can I do?」の間で

別の男子から、こんな質問も。

「Is there a secret to success?(成功の秘訣はなんですか?)」

マイケルさんは、自らホワイトボードに書いた2つの質問を指差します。

「Who am I?」
そして
「What can I do?」

1つ目の答えは、自分では選べない、持って生まれたものや属性。たとえば性別や国籍、兄弟の順番など。
2つ目は自分次第で変えることができる、学校や家庭や友人関係や地域での役目。

“成功”には、時には「Who am I ?」(持って生まれた素質や運)が重要だけど、時には「What can I do ?」(後天的な努力や行動)が重要な役目を果たす。自分で選べないことが半分、自分で選べることが半分。
君たちは十和田みたいな街に生まれてまずはラッキーだよ。安全で、食べ物もおいしくて、人もいい。十和田は僕に、ゆっくり歩くことを思い出させてくれた街。樹木、水、生命があふれていて素晴らしいよね。
あとの半分は、やってみること、挑戦すること。何ができるか、何をするか。僕がいつも思っているのは”やるしかない”。”こういう仕事がしたいから勉強する”と準備するのもいいんだけど、目的があってそれを実現するには…とにかく今”やるしかない”んだ。

できることがある限り、ここにいる

ある女子からの質問は「ずっと十和田にいますか?」

この質問をよくされるというマイケルさん。

この先何が起こるか分からないから、ここにずっといるかも分からない。でも、ここでできることがある限り、ここにいたいと思っているよ。

と話し、さらにこう続けました。

君もどこか他の街に行ったっていいんだよ。一つの場所にずっと住んでいると、考え方を変えることは難しくなる。でも新しい場所で、見たことのないものを見たり、色々な新しい経験をすることで新しい考え方ができるようになる。新しい君自身になって戻ることで、十和田を変えることだってできるんだ。新しい場所に行くと自分の中にある考え方や気持ちが分かってくるし、考えるきっかけになると思う。それは楽しいことだよ。

出会いの積み重ねでかたち作られていく自分だけの道を、楽しみながら進もう。マイケルさんが伝えたメッセージは、14歳の心にそっと染み入ったようでした。最後に設けられた授業の振り返りの時間。静けさに包まれた教室には、生徒たちがノートに今の気持ちを刻み付けるように、一心に鉛筆を走らせる微かな音だけが響いていました。

平成29年7月9日に開催された「十和田市移住フォーラム」でのゲストトークにおいても子どもたちが地元の魅力を知ることの重要性が話題になりました。

そのときの記事がこちらになります。
語LOG No.5へ → http://towada-iju.com/collection/webmagazine/005

十和田第一中学校の「ふるさと学習」の一環の「移住者さんと語ろう」は、移住者と対話し、子どもたちがこれまでとは違う視点を得ることで、将来の夢や暮らし、仕事など様々な選択肢があることに気付くものとなりそうです。

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