とわだを読む 日々の語LOG

TOWADA HIBI COLLECTION WEB MAGAZINE

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移住×起業×Wワークで叶えた、
“自分にとって大切なもの”に囲まれる暮らし ―後編―

2022年に十和田市に移住し、青森県産品を中心に食の魅力を発掘・発信するショップ「Schuzlmithernic Life (シュツルマイザニックライフ)」を運営する清水まりえさん。
企業の採用支援や起業・経営支援などを手がけるビジネスの“なんでも屋さん”としても活躍中です。
独自のキャリアを歩む彼女の目に映る、移住先としての十和田市の魅力・課題とは?
移住×起業のリアルに触れた、前後編の後編です。

  • しみず     
    清水 まりえ

    東京都出身。飲食サービス企業の店舗運営、マーケティングを経て、ケータリング企業の立ち上げ・マネジメントを担う。2022年に十和田市へIターン。2023年に法人設立。青森県内の食品を中心に、日本の食の魅力を発掘・発信するWebショップ&店舗「Schuzlmithernic Life (シュツルマイザニックライフ)」を運営。フリーランスで企業の採用支援も行う。

    ●Instagram https://www.instagram.com/mariei432/?hl=ja
    ●EC Shop https://schuzlmither.official.ec/

車社会を謳歌! 住環境改善のヒントは空き家のリノベーション

移住に不安はありましたか?

それはやっぱりありました。移住を決めたときはそうでもなかったのですが、いざ引っ越しを目の前にした時に怖くなってしまって…。子どもが保育園を転園するときに書類を書かなきゃいけないのに手が震えてしまって、「あ、私の東京の生活が全部終わるんだ」みたいな気持ちになりました。

生まれてからの全てが東京にあるわけですからね。

家も仕事も、子どもの通っている保育園も、友人、家族、全部あったのが一旦終わるんだと思ったら、さすがに怖くなっちゃいました。メンタルを鍛えてきたつもりだけど、 この一大決心は、意外と自分も緊張しているんだなと思って震えていました。

しかしそれを超えてきて、今ここにいらっしゃる。2021年11月にお試し移住をして、実際に引っ越したのは、いつ頃ですか?

2022年6月移住です。

そうなると、半年ちょっとの期間でお仕事の整理をして、引っ越しの準備をしたんですね。

短かったと思います。

実家も東京にあるということは、ご家族にお話しする期間も含めて半年ですか?

母は反対派でした(苦笑)。「平均寿命も短いし収入も低いし」って、青森県の悪いランキングいっぱい見つけてきて(笑)。でも今は私がすごく楽しそうに暮らしているので、「ちょっと青森行ってみようかな」くらいまでは言ってくれていますよ。

では、いざ十和田市で暮らしみての印象はいかがですか? 

田舎すぎない。ご近所付き合いが濃すぎたらどうしよう…と思いきや、 東京と同じように、隣に誰が住んでるかいちいち探らない。そんなことが普通にありましたね。あと、とにかく人が穏やかな印象。ただ、住まいを探すのはとても困りました。

そうだったんですか!

東京しか知らない私としては、 賃貸の選択肢が狭すぎて住まいを探すのにとても苦労しました。家をすぐ建てることができない立場の人には賃貸しかないので、住環境は贅沢ができないなっていうのは、移住を考えている人にはちゃんと伝えたいです。

住まいというインフラの問題ですね。

パッケージ的なよくある賃貸マンションや戸建てばかりが多いので、家族向けの賃貸が少ない印象があります。空き家が多いので、そんな空き家をちょっとリノベーションして貸し出してくれたら、賃貸を探している人にはすごく助かるのに…と思います。住宅リノベーションの補助金みたいなものを作って、空き家が再活用されるようになればいいですよね。

例えば、地元の建築士さんがプロデュースして、おしゃれで住みやすい住まいにしたらいいかも!

いいですね!多分、これからの20代、30代は家を買うという感覚がなくなってくる気がします。家を買ったら将来の負担が大きいですからね。

確かにローンなどの負担が重いですよね。

となると、賃貸を充実させるしかないんですよね。現状だと、いい家がある都心に人が流れてしまう気がします。

家と言っても「最低限住めます」だけでは厳しいのかもしれませんよね。

そうなんですよ。例えば水回りも大事ですよね。古めかしいお風呂の家に住むのが抵抗ある人も、多分いると思うんです。

では、以前の暮らしとはだいぶ変わりましたか?

そうですね、今は車社会を謳歌しています。東京では電車と徒歩で生活ができたので、 運転が苦手で不安もあったんですけども、今は山とかも平気で運転しています。冬は行きませんけど(笑)。車社会でよかったものが1つあって…。子どもの発熱が長引いたことがあったんです。子どもと2人暮らしなので買い出しに行けなくなってしまって。誰かに頼まないとどうにもならないけれど、まだ軽々しく甘えられる存在がいない時で、どうしよう?って思っていた時、Instagramに「誰か今暇な人いませんか。ちょっとお使い頼まれてくれませんか?」って投稿をしたら、みんなすごく気にして来てくれて。「車だからすぐ行けるから」って、近所の人たちが寄ってくれたり、差し入れを置いて行ってくれたりして、とても助かりました。東京に住んでいた時は、友達はみんな電車を乗り継ぐような距離だったので近くにはいませんでした。車社会だからこそ、人が助けに行きやすいんだってことをすごく感じました。それは東京では多分できなかった地域との繋がりだと思います。

車とSNSの組み合わせがいいですね。

車だったらちょっと寄りやすいなって私も思うし、周りの人も思ってくれたみたいです。車だから、通り道だからみたいな感じだと、お互いにいい感じで助け合えるのではないでしょうか。

運転もバリバリされるということで色々行かれていると思うのですが、十和田市にお気に入りスポットはできましたか?

十和田神社がすごく好きです。十和田神社に導かれて…じゃないですけど、あの神秘さにも惹かれて十和田市を選んだのがあります。

十和田湖畔の神社ですね。

早朝から行ったこともありますし、あと「鳥曇(とりぐもり)」さんも、すごく良いですよ。野鳥好きのご夫婦が移住して開いた、雑貨とカフェのお店みたいな感じです。焼山地区にできたばかりなんですよ。

以前、牛小屋コンサートの会場でお話を聞かせていただきました。お二人で建物をリノベーションしながら準備中とのことだったのですが、ついにオープンということでうれしい限りです。交流がどんどん広がっていますね。プライベートでの交流をお聞きしたかったのですが、清水さんの場合はお仕事とそれ以外って、あまり離れていない感じがします。

そんな感じなんでしょうね。自分のプライベートは全部仕事と重なっちゃうんです。大好きなので分けてもいない。休みという概念もない。昔からけっこう、そこの境目がないんです。

好きなことをやっているから、でしょうか。

そうですね。全力投球で、プライベートも全部仕事と思ってやってきました。体力的に大変なことになるので、良い子はマネしちゃダメですよ(笑)。

私、移住してきた当初は、2ヶ月間車なし生活で、すべて徒歩で移動していて、その時から「農園カフェ日々木」というレストランの、移住の大大大先輩の方がすごいお世話してくださって。「マリエさん、病院行くなら乗せていきますよ」とか全部お世話してくれて、そういう人たちがいたから今成り立っているというのがあります。

それは頼もしいですね。お店を通しても、きっと交流が生まれていますよね。

そうなんですよ。みんな普段は周りに言いづらいことも話してくださって、相談に乗ることも多いんです。このお店があるから、みんな、言いやすくていいのかなって思います。女性の方の割合が多いですが、一度来てくれたお客様の繋がりで男性が来てくれたり、ご夫婦、カップルで来る方もいます。地元の方だとリピーターになってくださる方も多いですね。

地方住まいの一人として言わせていただくと、やっぱり人の出入りが少なくて人間関係が固定しがちなところは否めないかなと思います。そこに清水さんがいらしたことによって、刺激になるんじゃないでしょうか。お世話してあげたい気持ちが出てきたり、いつもの固定された関係の中では話せないことが話せたりすんですかね。

“ちょうどいいよそ者”なんですよ。みんな繋がりあったり、その分、縛りがあったりするからこそ、真っさらな状態のよそ者にはなんでも言いやすい。話をしてくれたことは、もちろん口外しないですよ。皆さん別に何も、解決してほしいとか、そういうことを望んでいるわけではないですし。

話せる場所があるって大事、ということなんですね。

冨田さんの焚き火の会がそんな機能をしていて、メンバーが固定化しないで循環していくところも、すごく良い気がしています。このお店も色々な人が来てくれて、固定化しない感じがいいなと自分で思ってます。

冨田さんのインタビューはこちら
https://towada-iju.com/collection/webmagazine/040

  • 焼山にできたカフェ&ギャラリー 鳥曇(とりぐもり)

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「やりたい」を活かせるまちにして、かっこよく働く大人が増えたらいい

最後に、これからのことや目標などがありましたら教えてください。

野望はたくさんあります!今はお客様が喜んでくれるのもすごく嬉しいんですけど、生産者さんが喜んでくれるのが正直、一番嬉しいんです。生産者さんの話を聞いて、自分なりにこんな風にまとめましたって見せると、「言いたいこと全部言ってくれた」「今まで取材を受けたけど、こんなに自分が言いたいことをまとめてくれたのは初めて」とか、すごく喜んでもらって、それが一番モチベーションになっているかもしれません。やりたいことも色々出てきているんですが、1人ではできないことがいっぱいあって、それを頼める仲間を作りたいですね。

やりたいことは色々あれど、実現する第一歩は仲間作りである、という順番なんですね。

ですね。簡単にはいかないと思いますけど、頼れる人がだんだん出てきています。

先ほどの住環境のこと以外で、こうすればもっと十和田市は良くなる!というところはありますか? 

なんて言うんでしょうか…働く大人がかっこよくなるといいなって思います。人間関係にしても仕事にしても、新陳代謝があまりないからか、新しいものにワクワクしながら向かっていく、という場面をあまり見ないというか。そうなると、子どもたちも、「ここでこんな風に大人になりたい」って希望をなかなか持てないんじゃないかな?と思います。“十和田市”っていう大きな主語で言うことではないかもしれないですが。

でも、お店をやっていると「自分も何かやってみたい」って思っている人がけっこういることが分かって、でも一歩踏み出せない…みたいな人もいるので、そういう人への支援は市としてもっともっとやってほしいなって思います。

例えば、起業3年目くらいの人がサポートにつくとか。行政の相談員が起業の経験者ということは少ないと思うので、実際に創業した方がメンターとしてつく方がリアルじゃないですか。あと、税理士費用を1年目は負担するとかもいいかもしれないですね。税金、健康保険、色々なことが関わってくるので、そういうことも含めて等身大で助言できる人がいたらいいなって思うことがあります。補助金を出すだけじゃない、もっと必要なサポートのあり方を考えることも大切ではないでしょうか。やりたいって思っている人が絶対にいると思うので、それを活かせるまちになれたらいいなと、すごく思います。

やりたいことがある人が十和田市に来るのもいいわけですね。

もちろんです。でも、けっこうやりたいことがふんわりしている方も多いので、それをもっと形にする支援サポーターもいたらいいなと思います。

確かに、それはいいアイデアですね。

私はフリーランスの方では“なんでも屋さん” としてやっているので、出された課題を全部解決するようなことをしてきました。例えば、経営者さんのざっくりした考えを整理して可視化する、そんなことがすごく得意なんです。お仕事をしてきた中で「相手が何を求めているのかが分かる力」と「課題を解決する力」はすごく大切だと感じてきたので、それを伝えられるようになることを目指しているんです。それで、近々講座を開こうと思って準備しています。

どんな内容になりそうですか?

「コミュニケーション力を磨く」、要は、 どうやって相手に伝えて、どうやって相手のことを受け取るかという基礎の能力を根底から養う講座を作りたいなと思います。コミュニケーション力って仕事、家族関係、恋愛関係、友人関係、何でも必要なことなので、みんなに有益だよって思っています。

私は人事のお仕事で新入社員研修とかもやっていたので、ビジネスマナーやビジネス上のトラブルをどう解決していくかとか、そういう要素も入れつつ伝えていきたいんです。いずれ子どもたちにも、「自分のことを伝える」「相手の話を理解する」の基礎力を伝えられたらいいなって、もう野望だらけでやっております。

やっぱり全方位に全力投球!

ゆるゆる、無理せず、って感じでやっていきたいです(笑)。

お店も、起業支援や人材育成に関してご自身の経験を生かして考えていらっしゃることも、これからがとても楽しみです!今日はありがとうございました。

ありがとうございました。

前編はこちらのリンクから
https://towada-iju.com/collection/webmagazine/041

今回の取材場所

シュツルマイザニックライフ/Schuzlmithernic Life

〒034-0011 青森県十和田市稲生町10-34
EC Shop:https://schuzlmither.official.ec/
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