移住者インタビュー

十和田の人は僕ら“よそ者”にも壁を作らずに接してくれる

COLLECTERS INTERVIEW#007

渡部環境設計事務所

渡部 良平さん

東京都調布市生まれ、多摩市育ち(Iターン)

横濵 久美子さん

東京都稲城市生まれ、北海道網走市育ち(Iターン)

移住年:2016年1月

<良平さん>1983年生まれ。工学院大学大学院修了。建築設計事務所に勤務し、学校や公共施設などの設計に携わる。2012年、個人事務所設立。14年、久美子さんと結婚。16年1月、移住を機に渡部環境設計事務所を夫婦で共同設立。同年、設計を手がけた所沢聖地霊園管理事務所がGOOD DESIGN AWARD2016を受賞。
<久美子さん>1980年生まれ。昭和女子大学大学院修了。大学院修了後は個人建築設計事務所に所属し、主に住宅設計を手がける。2011年、個人事務所設立。14年、青森県野辺地町で両親と祖母のために「榑縁(くれえん)の家」を設計。16年3月、長男を出産。

渡部環境設計事務所:http://watabe-aa.com/

まちを彩る建築に惹かれて

 幕末、南部藩士だった新渡戸傳(にとべ・つとう)が荒れ地を開墾したことから生まれた十和田市は、碁盤の目状に整然と区画された街並みが特徴。建築家の渡部良平さん、横濵久美子さん夫妻にとって、美しい通りや公園は憩いの場であると同時に、移住の決め手となった大切な場所です。
 大学院修了後、建築士としてそれぞれ活躍していた2人は共通の友人を介して出会い、2014年12月に結婚。その後、久美子さんの両親が父の出身地である青森県野辺地町へUターンし、祖母の敷地に新築することが決まり、久美子さんが設計を手がけることに。夫妻は住まいのある東京から青森に通うようになりました。知り合った地元の建築家に「若手がいないし、こっちで仕事をしてみたら?」と誘われたのが、移住を意識するきっかけになったとか。
 「建築の仕事って実績を見て来てくださるお客様もいれば、人間関係から出てくることもある。都会よりも地域の人とつながって仕事ができそうな青森に、可能性を感じたんです」
 Iターンに向け動き出した2015年夏、久美子さんは妊娠中。家族の将来を考え、市内の設計事務所数や地域性などを仕事関係者にリサーチして候補を絞り込んでいきました。そして決定打は、前述の街並み。
「西沢(立衛)さんの美術館、隈(研吾)さんの市民交流プラザ、安藤(忠雄)さんの図書館。世界的建築家の作品がこんなに次々と建った街って他にないし、建築への理解を感じました」
翌2016年1月、十和田市に移り住むとともに夫婦共同で建築設計事務所を設立。こうして新たな生活がスタートしました。

四季の変化を味わう日々

 十和田で暮らし始めて2ヶ月後、長男・創史(そうし)くんが誕生。建築家の顔に父・母としての役割が加わり、初めての子育てに奮闘中です。
満員電車に揺られて出勤し、朝9時から深夜まで仕事。終電車を逃せばタクシーで帰宅。東京時代はこんなスケジュールをこなしていた夫妻ですが、今は自宅兼事務所のため通勤時間ゼロ。久美子さんは家事と子育ての合間に仕事をし、良平さんも創史くんと一緒に食事したり、お風呂に入れたりと協力しあっています。友人・知人がいない中で始まった子育てですが、自ら時間を管理できる分、移住前に比べ気持ちにゆとりができたといいます。
「東京から両親が遊びに来て奥入瀬渓流を案内したことがありました。とても忙しい時期で泣く泣く行ったんですが(笑)、思いがけずいい気分転換になって、その後気持ちよく仕事ができました。自然に触れるとこんなにリフレッシュできるんだなと」と良平さんが言えば、久美子さんは日々の暮らしの中で自然の恵みを満喫中とのこと。
「大家さんやご近所の方、実家や親戚からお裾分けをよくいただきます。季節の野菜やフルーツとか。山菜を天ぷらにしたり、ジャムを作ったり楽しいです。ふつうに暮らしていても季節の変化が分かるんですよね。毎日が単調にならない」
 また久美子さんは保育園、市民交流プラザなどで開催されるヨガ教室や離乳食教室にも参加。相談しあえるママ友も増えてきました。

地域の問題を建築で解決できたら

 移住以来心がけてきたことは、人とのつながりを大切にすること。仕事上ではもちろん、町内会に加入して、地域の行事にもできる限り家族で参加しています。
 「十和田の人は僕ら“よそ者”にも壁を作らずに接してくれる」と良平さんは話しますが、それには夫妻の人柄も関係がありそうです。じっくりと言葉を選びながら話す良平さんも、控えめながら柔らかい雰囲気を持つ久美子さんも、長い時間をかけて育まれた自然、そこで暮らす人々の呼吸に寄りそっているように感じられます。
 「そういえば、ビジネスライクなガツガツした人ではないから人に紹介しやすいって言われたことがあります(笑)。僕らはもともとあった自然やコミュニティの中に入ってきたわけだから、敬意を忘れちゃいけないって思いますね」と良平さん。
 現在は東京と青森の仕事が半々ですが、いずれは地域に根差した建築を手がけるのが渡部さん夫妻の目標です。
「建築設計、デザインは、人間の幸せのかたちや周辺環境との関係、街や時代を考えるきっかけなんですよね。たとえば空き家や空き店舗をリノベーションして使うとか、街の抱えている問題を建築を使って解決できたらいい。その場所ならではの視点、素材、デザインってあると思うんですよ。地域の人たちの知恵を借りながら、一緒に何かをつくりあげられる関係を築きたいです」(良平さん)

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